検索するのはどんなとき?

Googleをはじめとする検索エンジンはインターネットを利用するには欠かせない。誰も異を唱える人はいないだろう。

誰かのブログにも書かれていた(ポッドキャストで言っていたのかもしれない)が、最近ではTV CMでもURLを案内するのではなく、「XXXを検索」ということが多くなっているそうだ。言われてみると、わかりにくいURLを読み上げるのではなく、あるキーワードをAdWordsやオーバーチュアのスポンサードサーチなどのキーワード広告であらかじめ買っておき、それを紹介するほうが企業にとっては確実に顧客をサイトに誘導できるのだろう。

企業側の意図ともあいまって、検索エンジンの出番はさらに増えつつあるが、それではユーザーであるわれわれはどのようなときに検索をしているのだろう? そんな統計が最近読んだ「ザ・サーチ グーグルが世界を変えた」(ジョン・バッテル著 中谷和男訳 日経BP)に書かれていた。

ちょっと長いが引用しよう。

こうした検索の質問項目は、次のように大きく分類できるだろう。まずパイパージェフリーによると、検索の二〇パーセントは催し物などのエンターテインメント情報を求めており、一五パーセントは基本的に営業目的だが、約三分の二の六五パーセントは情報全般を探して検索している。

またケルシーグループの調査によると、検索の二五パーセントは地元の情報で、その大部分が歯科医院やレストラン、水漏れ修理など日常生活に関わる営業情報が多い。

さらにハリスの世論調査によると、検索の四〇パーセントは「見栄の検索」と呼ばれるものだという、検索エンジンに自分の名前を打ち込んで、インデックスに載っているかどうかを探すのである。電話が普及し始めた頃に電話帳に載った自分の名前を探したように、この見栄の検索はこれから数年間は確実に増えていくだろう。自分の名前以外には、二〇パーセントが昔の恋人、三六パーセントが昔の友だち、また二九パーセントは家族の情報を探していた。

この「見栄の検索」というのは私にも見に覚えがある。自分の名前をGoogleアラートで登録しているほどだ。ただ、私の場合は「見栄」というよりも、自分のことを悪意を持って書かれていたり、事実を間違って書かれていることが無いか心配なのが主な理由だ。実は、数年前、あるコンファレンスでセッションのスピーカーを担当させてもらったのだが、そこでの講師紹介で私の大学卒業年は4年ほど古く書かれていた。おそらく私が資料提出時に間違ってしまったものだと思うので、これについては自業自得なのだが、このようなことがこれ以上起こることは避けたい。

名前の検索は自分以外に対しても確かに行う。特に、これから会う予定の人を検索することは多い。私は仕事柄、研究者の人などとも良く会うのだが、どのような研究をしている人か、その分野ではどの程度の著名人なのかを前もって知っておくことで、初対面でも話がスムーズに進むからだ。

次も同じ本からの引用だ。

古典的な専門書であるアンドレイ・ブローダーの『ウェブサーチの分類学』(二〇〇一)は、著者自身が検索サービス会社アルタビスタのCTO(最高技術責任者)時代に検索の改良に当たった経験から、クエリーのデータに基づいてその大部分を書いている。そのなかでブローダーは、検索の大部分が情報を求めているという考え方を否定し、多くはナビゲーション(別ページへの誘導)か、トランザクション(データ処理・交換)だとする。

ブローダーによるレスポンスとログ(交信記録)のデータ分析から興味深い例を若干指摘すると、

・ほとんど一五パーセントの検索が、「健全なドキュメントとは言えないテーマについての豊富なリンク」を求めている。
・セックスに関する質問がログデータの一二パーセントを占める。
・検索の二五パーセントが「すでに念頭にある特定のウェブ」を探している。
・およそ三六パーセントはトランザクションの情報、つまりブローダーの言う「ウェブを介した活動の実行環境」を求めている。

ウェブを介した活動とは商用検索と言い換えられるが、この商用目的と情報目的の検索の違いは、それほど明確ではない。事実パイパージェフリーのデータでは、インターネット上の商用検索は三五パーセントを超えているが、インターネットでは大なり小なりすべてが商用目的を備えていると言えるだろう。

ナビゲーション(別ページへの誘導)のための、その中でも「すでに念頭にある特定のウェブ」を探すための検索というのも私自身とても多い。たとえば、ある省庁(府省)のサイトに行って、国からの資料を探すことも多いのだが、何度も訪れたことのあるサイトであっても、省庁の英語名での略称を忘れてしまい、結局は検索エンジンのお世話になってしまうことがほとんどだ。省庁のサイトにたどり着いてもお目当ての資料を探すのが一苦労で、サイトに用意されている検索機能よりも、ここでも検索エンジンのほうが頼りになったりすることもある。

トランザクションのための検索は私の場合は少ないかもしれない。私はコンピュータ関係のものを購入するときはここ、書籍はこことほとんどのものは買うサイトを決めているので、買い物の際に検索エンジンでサイトを探すこともない。ただ、これは私の購買特性が極めて単調なことの裏返しかもしれないので、威張れない。

セックスに関する質問は私はほとんど行わないが、「健全なドキュメントとは言えないテーマについての豊富なリンク」についての検索は比較的多いかもしれない。テレビで取り上げられた事件や犯罪などから、関連するキーワードで検索をかけることはある。また、ネットワークセキュリティに関しては、自分の仕事とも関係するので、アングラなキーワードで検索してみることは確かに多い。

引用した、この書籍のデータは主に米国のものだと思われるが、日本での傾向はどうなのだろう? 欧米との違いというのは見られるのだろうか。