Bill GatesのWinHECキーノートに見るIPv6対応の本気度

インターネットへの対応に出遅れたマイクロソフトが方針を変更し、社内の全部署がBill Gatesの大号令のもと、インターネット対応を加速させたのは有名な話だ。当時、私はまだマイクロソフトには入社していなかったが、マイクロソフトがさらなるインターネット対応の具体的なプランを発表したサンフランシスコのPDC(1996年開催。Internet PDCとも呼ばれる)に参加し、本気になったときのマイクロソフトの強さを実感した。このPDCではActiveXの発表、Javaへのサポートなどが発表され、さらには当時のNeXT CEOだったSteve Jobsが登壇し、NeXT製品のWinodwsへの対応を表明した*1

ここ数年、私はIPv6について、お客様やパートナーの方々とお話させていただいている。世界をリードする立場である日本のキーとなる方々とお話させていただくことで、Windowsをはじめとするマイクロソフト製品に必要となるIPv6機能を理解させていただいた。また、マイクロソフトの方針もお伝えしてきた。

そんな関係で、いろいろな会合などに参加させていただいているが、日本のIPv6コミュニティの方々とのアルコールが入った席で、私は以前、こんなことを言ったことがある。

マイクロソフトがインターネットへの対応を促進したのはBill Gatesの一通のメールがきっかけだったんですが、私はIPv6に関しても彼から同じような大号令をかけてもらうようにしたいと思っています」

このとき、同じ席にいた人からは、今でも「それで、Bill Gatesからメールは出ましたか?」と聞かれることがある。会社とのNDAがあるので、社内でのメールの内容などについては、ここで詳しく書くことは残念ながらできない。しかし、実際の成果としてのWindows Vistaを触っていただければ、マイクロソフトIPv6対応を確実に進めてきたことがわかってもらえるだろう。

そんなことを感じさせるのが、ちょうど今、Seattleで行われているWinHECでのBill Gatesのキーノートだ。残念ながら、私は参加することができなかったが、便利なものだ、インターネットでオンデマンドでストリーミングを見ることができるし、トランスクリプトだって読むことができる*2。キーノートのオープニングビデオでは、現在注目されている技術が次々と(名前だけだが)表示される。その中にIPv6も含まれていたのだ。さらには、ごくわずかに触れただけではあるが、Bill Gatesのスピーチの中でも言及されている。

たったこれだけと思われるかもしれないが、これだけでも、私にとってはここ数年の努力がやっと実を結んできたと実感させる。実際には、Bill GatesがIPv6を言及するのはこれが初めてではない。数年前から何度かIPv6についてその可能性やマイクロソフトの方針について話している。ただ、実際に新しいOSがリリースされる年のWinHECでBill Gatesが言及したことで、私の中では何か一区切りがついた感じだ

もちろん、実際に製品がリリースされるまで、まだまだ気を緩めることはできない。

*1:当時の様子はイーストの下川さんの書かれた[http://www.wincons.or.jp/view/vol22/simokawa.html:title=レポート]で今でも読むことができる。

*2:Bill Gatesの[http://www.microsoft.com/winme/0605/27803/WinHEC06_BillG_MBR.asx:title=ビデオ]と[http://www.microsoft.com/billgates/speeches/2006/05-23WinHEC.asp:title=トランスクリプト]