日経新聞元旦第二部「IT・デジタル特集」のまとめ

今日の日記は主に自分のための備忘録。

元旦の日経新聞の第二部「IT・デジタル特集」は次世代ネットの特集だ。元旦の日経新聞ではだいたい毎年IT関連で特集が組まれるが、今年はNGNとWeb 2.0を中心に、そのほか今年ブレークしそうな技術やサービスが紹介されている。

一面:次世代ネット新潮流

この手の話題ではおなじみの編集委員関口氏の執筆する次世代ネットの総括記事。まず、NTTのNGNにより実現される世界が紹介される。これはすでにいろんなところで書かれている内容*1。目新しさは無い。

  • 2010年までに加入電話の半数の3,000万回線を光ファイバーに変える
  • 投資額は3兆円
  • 一般電話収入は4年で1兆円も減少しているので、電話網のIP網化は急務

ライバルのKDDIも同様の戦略。2007年度末までに基幹網をIP化し、FMBC(固定・移動・放送の癒合)を進める*2KDDIについてはわずかしか触れられていない。

次に海外に目を転じている。まず、英国のBT。

  • 2005年の秋に携帯と固定電話を融合した「BTフュージョン」を開始
  • 2007年1月からテレビ番組をネット配信する「BTビジョン」をスタート。月額3ポンド(約700円)で「リプレイTV」(番組を1週間さかのぼって視聴できるオプション)が利用可能。

次にフランステレコム(オレンジ)。

  • フランス、英国、オランダでFMCの「unik」を2006年秋から開始
  • テレビ番組配信サービスの「オレンジTV」をすでに提供
  • 2006年6月からはハイビジョン映像配信もスタート
  • パリ市内では光ファイバーの配信実験を開始しており、2007年3月から正式サービスに移行予定

そのほかの新興企業やサービスも紹介される。

  • スペインのFON(フォン)。2006年末には日本でもサービスを開始した。グーグルやスカイプ・テクノロジーズなどが出資
  • 米国西海岸のMINO(ミノ)。携帯による国際通話のIP化。携帯電話のデータ定額制や無線LAN機能を使い、ネット経由で電話する仕組み。欧米やアジアなどのサービス圏内なら、通話料は1分あたり一律2.2セント(約2.5円)
感想

ヨーロッパのNGN事情はたまに記事で読むことはあったので知っていたが、フランステレコムのリプレイTVというのは知らなかった。米国のNGNについて聞くことが少ないが、やはり米国はのんびりしている感じ。いまだにブロードバンドもケーブルかDSLどまりだし。

MINOというのも不勉強ながら、初めて知った。面白そう。MINOのサイトを見てみると、携帯電話にアプリケーションをインストールするようだ。試してみても良いかも。

二面:次世代通信「NGN」の行方

無記名記事。一面に続いて、NGNの効用と利用シナリオを説く。NGNの利点として挙げられているのが、以下の3点。

  1. 安全性
  2. サービス品質
  3. 大容量

インターネットがベストエフォートサービスだとして、同じIPを使うネットワークとしてのインターネットとNGNの違いが紹介されているが、一般の読者にどこまで違いが伝わるか。ただ、限られた紙面で、NGNの利点と逆に事業者(主にNTT)による囲い込みの懸念まで解説できているのは評価できよう。

一方、「未来の姿は」として、NGNにより実現される未来図を描いているが、これは必ずしもNGN _だけ_ により実現されるものではないだろう。たとえば、ここで描かれるビジネスマンの一日として次のようなものがある。

 六時に気象すると、液晶テレビのような形をしたネットワーク端末の電源を入れる。
 画面には複数の配信会社から届いた今朝のニュースが表示される。興味のあるテーマや趣味、嗜好(しこう)や仕事の内容などを入力しておくと、記事が自動選別され配信される。スポーツの試合結果や芸能ニュースなどは動画で楽しめる。待ち時間はゼロだ。

この利用シナリオでNGNが必須なのは動画配信の部分くらいだろう。ほかはRSSやパーソナリゼーションの技術を発展させていくことで可能だ。ただし、動画に限らず、記事配信も、プル型ではなく、プッシュ型にしたいならば、P2Pなどとの融合も考えられる。その場合にはQoSが必要になるのかもしれない。これは確かにNGNにより利用が促進されることが期待される技術の1つだ。

また、この同じビジネスマンの一日の中では次のようなシーンがある。

 端末はサーバーに保存されているソフトをネット経由で呼び出して使う。ハードディスク駆動装置(HDD)などの記憶媒体は内蔵していない。海外旅行の際にビデオで撮影した動画やネットで買った音楽もすべて事業者から借りているサーバーの中だ。

これは、シンクライアントもしくはSaaSなどを一般利用に発展した姿だ。これの実現にはセキュアな大容量のネットワークが必須なので、確かにNGNに期待される部分ではある。ただ、コンテンツ事業者、サービスプロバイダ、そしてネットワーク事業者の三者が、インターネットではなく、NGNという土俵の上で、どこまで、この革新的なネットワーク利用シナリオの実現に向けて、手を組むことができるのかが課題ではないかと思う。また、異なるNGN間の相互運用も問題だ。記事でも、次のように警鐘を鳴らす。

 新しいビジネスモデルも模索している。まず決済や課金、認証といたプラットフォームを企業に提供する。例えば高解像度の映像をとぎれないよう帯域を保証しながら、利用者に提供する新しい事業も可能となる。ただ、NTTが通信サービスの根幹を握り、囲い込む動きになるとしてNGNに対する警戒感を持つインターネット接続事業者や他の通信事業者も多い。
 NGNはNTTだけでなく、英BTやKDDIなど国内外の通信事業者も構想を発表。それぞれがITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)が標準規格化を進める品質定義に応じてネットワークをつくり始めているが、その中身はまだ見えてはおらず、将来は各通信事業者のNGNをどうせつぞくするのかという課題も出てきそうだ。

感想

ベストエフォートであるが故に、インターネットはセキュリティやサービス品質(QoS)などで課題を抱えているのは確かであろう。ただ、インターネットはそれが故に独自の革新的な技術を生むカルチャーも醸成している。NGNという事業者主体のネットワークになった場合、どこまでこのインターネットのカルチャーを取り込んで、革新性を維持できるかがポイントとなるのではないだろうか。

記事としては、すでにいろいろなところで語りつくされた感あり。ただし、上にも書いたように、今まであまり興味を持っていなかった人に1面という限られた分量で説明するには、良くまとまっている。

三面:Web 2.0、社会を席巻

いまさらという感じもするWeb 2.0の記事。無記名。二面のNGNと同じく、キーワード程度しか知らなかった人のための記事か。

まず、携帯サイトの状況の変化。キーワードとして、「無料化」と「オープン化」を挙げる。「勝手サイト」の台頭がその象徴だと言う。

例として、DeNAモバゲータウンを挙げる。中高生の支持を集める無料サイト。対戦型ゲームとSNSを楽しめる。広告収入に依存したビジネスモデルだが、データ通信の定額制により可能になったと言う。

KDDI(au)が「EZweb」のトップページにグーグルの検索ボックスを設置したのも象徴的な出来事。NTTドコモソフトバンクモバイルも追従*3

勝手サイトはその名のとおり、事業者の管轄外で勝手にサービスをしていたサイトであるが、いまや主流は完全にその勝手サイトに移ったようだ。記事は次のように書く。

 従来は勝手サイトを閲覧するには、URLをいちいち入力する必要があったが、「公式」と「勝手」の区別を意識することなく利用できるオープンな環境が整った。いまや「iモード」利用の六割以上が公式サイトではなく、勝手サイトの接続といわれる。

記事では次に動画共有サービスを紹介する。YouTubeはもちろんのこと、国内のサービスとして、「アスクビデオ」(アスクドットジェーピー)、「アメーバビジョン」(サイバーエージェント)、「ワッチミー!TV」(フジレレビジョン子会社)、日本テレビ放送網*4、エキサイト*5の名前が挙げられている。

動画共有サービスでは、日本特有のサービスとして、携帯向け動画共有サービスも紹介している。紹介されているのは、グリーフリップ・クリップアメーバビジョンも携帯向けサービスを追加していると触れられている。

この三面でもう1つ触れられているのが、ブラウザの使い勝手の向上だ。IE7のリリースについて触れられており、タブブラウザやフィッシング対策などが紹介されているが、特筆すべきは、FirefoxIE7より先にこれらの機能をすでに実装していたことに触れられていることか。さらに、アドオン機能などにも触れるなど、このブラウザについての解説のうち、半分近くがFirefoxについて触れられていた。

感想

個人的には、ここで解説されているものの中で目新しいものは一切なかった。携帯サイトの状況から動画共有サービスなど広く浅く触れているという印象。できるならば、動画共有サービスの解説で、YouTubeに対する日本の著作権保持者と米国のそれとの対応の違いについて解説してもらえると面白かったと思う。

五面:ネット技術、人と人を結ぶ

SNS、ブログ、オンラインゲームの解説。特筆すべきことはほとんど無い。

SNSの解説では、ミクシィ、マイスペース、モバゲータウンなどの全体的な状況を網羅的に解説。安全性への不安ということで、ミクシィで昨年10月に発生した大手天気メーカー社員の個人情報公開事件について触れられ、それに対するミクシィ側の対応が書かれている。事業者側のよりいっそうの対策と利用者のリスク管理を求めている。

ブログに関しては、2007年3月末には3,445万人に達するという総務省の予測を紹介し、利用者の急増を解説している。アフィリエイト広告やブログ検索、社内ブログについても触れられている。

オンラインゲームについてはRPGから短時間で楽しめる格闘ゲームなどにトレンドが変わってきたことが書かれている。この理由について、記事では次のように書いている。

 ゲーム各社が短時間で気軽に楽しむ格闘ゲームなどに注力するのは、RPGで問題になった、ゲーム内の擬似通貨を現金に換えるリアル・マネー・トレード(RMT)が発生しにくいという背景がある。RMT問題を避けつつ健全な方策として非RPGゲームの存在感は今後も高まりそうだ。

感想

特に目新しい内容は無かった。

RMTについては、セカンドライフなどではどのように対応されているのか興味ある。セカンドライフのような仮想空間では、擬似通貨を現金に変えることも魅力的なことになりうるだろうし、擬似通貨自身が現実世界の通貨以上の意味を持つこともあるだろう。理由あって、セカンドライフはまだはじめることができないが、いつか実際に試してみようと思う。

そのほかの面

七面:電子デバイス、一段と進化

半導体、ディスプレー、燃料電池について解説。

九面:ネット通販が小売を変える

店頭と連動し相乗効果を狙うネット通販が解説されている。ドロップシッピングというキーワードが目新しい*6

▼ドロップシッピング
 事業を展開するときに中核となるのが、サービスの仕組みを提供する仲介会社だ。ネットプライスの子会社などが手掛けている。
 仲介会社は各メーカーから集めた商品情報を一元管理し、通販事業者に提供する。決済業務を代行したり、商品の受注情報をメーカーに送り、購入者への商品発想を依頼するのも役割だ。
 通販事業者は仲介会社のシステムを通じて販売したい商品をオンラインで選択。仲介会社の決めた卸値を見て通販事業者が小売価格を設定する。
 通販事業者には実際の商品の仕入れは発生しない。仕入れるのは商品の情報と画像だけだ。購入された時点で受注情報が仲介会社を通じてメーカーに送信され、メーカーの倉庫から商品を発送するかたちになる。

十一面:海外勢、攻めの経営を加筆

サムスン、アップル、ハリウッドの攻勢について解説。

十三面:IT化次々、地域に活気

自治体、中小企業、商店街のIT化について解説。

十四面:通信技術、最先端を競う

次世代無線(WiMAXや次世代PHSほか)、パソコン(Windows VistaとMac OSX Leopard)携帯電話の進化について。

次世代無線では、2.5GHz帯でのいくつかの技術(WiMAX、米クアルコムが推進する技術、京セラなどが海外で実用か済みの技術の合計4種類)を紹介し、総務省による免許割り当てが注目されていることを解説。実際のサービス開始は2008年以降。

携帯電話の進化では、上りの速度の向上を解説。また、このような携帯電話のブロードバンド化により、携帯電話のシンクライアント化が実現されると言う。

十五面:デジタル家電、乱戦の模様

薄型テレビ、ビデオカメラ、次世代DVDについて解説。

*1:[http://www.google.co.jp/search?hl=ja&rls=GGGL%2CGGGL%3A2006-39%2CGGGL%3Aja&q=NGN&btnG=Google+%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=:title=NGNの検索結果]。わかりやすく解説しているのを見ると良いだろう。

*2:[http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060728/244589/:title=ウルトラ3Gで「FMBC」を実現する---KDDI]

*3:NTTドコモは数社と提携。ソフトバンクモバイルはYahoo!モバイルとの連携強化。

*4:「[http://www.dai2ntv.jp/:title=第2日本テレビ]」のこと

*5:[http://dogalog.excite.co.jp/:title=ドガログ]のこと

*6:私にとって