ネーミングに見るアップルとマイクロソフトの違い

1/7に書いたネットを意識した名前付け。思いのほか反響が大きかった。

はてなブックマークのコメントでは、id:otsuneさんから次のようなコメントをもらった。

"The the"とか"The Band"は検索しにくい。でも.NetとかWordとかC#とかを付けていたMSの元スタッフが書いているというシュールさもあるな

ごもっとも。(同じ)id:otsuneさんから次のようにコメントもいただいた。

”.Net”とか”C#”みたいな、「TLDで使われている」「#はfragmentで使われている」というシステム的な都合で検索ワードで使いにくい名前もありますよね

ごもっとも。.NETなんてファインダビリティから考えると本当にとんでもない。いったい誰が考えたんだろう。

マイクロソフトのネーミング

マイクロソフトでも、開発コード名は結構ギーク心あふれたネーミングが行われていた。マイクロソフトに在職中に、最初に私が担当した製品はWindows NT 4.0 Terminal Server Editionであったが、この開発コード名がハイドラ(Hydra)であった。当時、開発グループ内だけに配られた長袖Tシャツがこんなの。

Windows Terminal Server's T shirt

ロゴの部分だけ拡大。

Windows Terminal Server's T shirt

いかがだろう。結構クールじゃないだろうか。これ、気に入っていて、まだ大事にとってある。

ほかにも、Services for UNIXはSolarcoasterと呼ばれていたし、Windows CE系のOSなどはスコッチウイスキーから名前を取っていた。

これら技術者の遊び心あふれる開発コード名は、個人的に愛着も深かったのだが、残念ながら、これらの開発コード名が製品化の際にそのまま使われることはなかった。むしろ最終的な製品名は極めて凡庸なものになることが多かった。

私はマーケティング担当ではなかったので、その正確な理由は知る由もないが、おそらく世界的に普及させることを考えた場合、世界の各地で商標を巡る紛争が起きないようにすることが条件だったからではないかと思う。実際には、異なる業種である場合には、同一の名前があったとしても条件次第で和解できることも多いだろうし、また、同一の業種でももちろん権利を譲渡してもらうような交渉は可能のはずだ。だが、マイクロソフトはそのような方針はとらなかった。結果、Windows関連製品の場合は、「Windows」を冠につける極めて均一なネーミングが行われることがほとんどであった。

アップルのiPhone

一方、昨日発表されたアップルのiPhoneはどうだろう。本日のニュースでは、結局、シスコとの間で商標を巡る交渉は決裂したのか。少なくとも、契約にまで行き着いていないのは間違いないようだ。となると、アップルは商標問題の解決を先送りしてでも、発表時にiPhoneの名前が欲しかったのではないかと思う。アップルにとっては、名前はそれほどまでに重要なのだ。

マイクロソフトのある意味大人な方針と、アップルのリスクを侵してでも名前にこだわる姿勢。たかが名前であるが、ここにも、この2つの会社の根本的なコーポレートカルチャーの違いが見えるような気がする。