半分過ぎたDigital Decade

マイクロソフトのBill GatesがDigital Decadeという言葉を口にしたのは、何年前のCESのキーノートだったろう。今朝、TBSの「がっちりマンデー」でマイクロソフトが取り上げられているのを見て、ふとそんなことを思った。

がっちりマンデーでは、OSを中心とするマイクロソフトのビジネスが紹介され、お約束のようにWindows Vistaの機能が簡単に説明された。番組は、名前は聞いたことがあっても実際のマイクロソフトのビジネスをあまり知らない人やWindowsのバージョンの差異にあまり興味がない人を対象にしているのだろう。無難にまとまっていた。だが、私はあまり面白く感じなかった。昔の暴れん坊のマイクロソフトが懐かしい。社会的責任も増えたので、仕方ないと思うが、ちょっと大人になりすぎていないか(米国本社も日本支社も中の撮影は禁止*1)。

Digital Decadeの話に戻ろう。Bill Gatesは2000年代の最初の10年でITを利用することで、世の中のライフスタイルやワークスタイルが劇的に変わるだろうと予想した。家庭内へのデジタル技術の導入例として、FreestyleやMiraのデモやSPOTの構想などが発表されたと記憶する。数年たった今、それらを振り返ってみると、FreestyleとMiraは実際に製品になった(SmartDisplay)が、1年で市場から姿を消した。SPOTはどうだろう。実際に在住しているわけではないので、肌身を持って感じることはできていないが、日本から見る限り、北米でもそれほど普及しているのではないようだ。

今年のCESは完全に同時期に開催されたMacWorld Expoに食われた感じがするが、それでもCESのBill Gatesのキーノートには長蛇の列が出来ていたようだ。Bill GatesはDigital Decadeを振り返り、「1年を通じて、進捗を見ることができるのは驚くべきことだ。Digital Decadeは確実に起きている。周りを見渡せば、どこでもそれらを見つけることができる。(It's amazing to see the progress over the course of the year, and truly the Digital Decade is happening. We see it everywhere we look.)」と述べている(Bill Gates: 2007 International Electronics Showより)。

Bill GatesはTVよりもWindows PCを使っている時間が増えていることやネット接続可能な携帯デバイスの普及を例に出し、今後はConnected Experience(接続の体験)が重要だと説く。Bill Gatesに言われるまでもなく、誰もが考えることではあるが、Bill Gatesが強調するのは、そのためにはマイクロソフトの製品や技術がベストだということ。今回もHome Serverの発表があった。Media Centerも今回のHome Serverも可能性を秘めていると思うが、正直言うと、どちらもWindowsである必然性が少ないように思う。Windowsである必然性を持たせるためには、接続することになる携帯デバイスやインターネットのコンテンツがマイクロソフトやWindows寄りのものである必要があるだろう。その点では、MacWorld Expoで発表されたiTV改め、Apple TVのほうが注目に集まるのは必然だろう。iPodや今回発表されたiPhone、そしてiTunes Storeの持つシェアをレバレージすることによる商品価値の向上は非常に大きい。また、インターネットのサービスとの連携を考えても、YouTubeFlickrなどに最適化されたプレーヤーが家庭用機器に載っているほうが、現時点では訴求力はある。

Digital Decadeのコンセプトは間違っていないし、半分が過ぎた今振り返ってみても、Bill Gatesの言うように、いくつかは確実に実現されてきている。ただ、この分野におけるマイクロソフトやWindows技術の普及状況は予想外の状況なのではないか。Bill Gatesは来年のCESのキーノートは行うようだが、それを最後に経営から引退する。Digital Decadeの最後まで見届けることができないことになるが、Bill Gates亡き後、マイクロソフトはどのように世の中を彼らのDigital Decadeの世界に導いていくことになるのか。

大人になったマイクロソフトに世の中を変えることはできるだろうか。

*1:がっちりマンデーのような番組だったからかもしれないが。でも、グーグルの日本支社は社内を撮影させていたぞ。同じ番組なのに。