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ネット時代のメディア戦略 ― 垂直統合から水平分散へ

ネット社会

この後、何回かに分けて、ネット時代におけるメディアの在り方を自分なりに整理したものを書かせてもらおうと思う。メディア 2.0などとかっこよく書こうとしたが、まだそこまで整理できていないし、「2.0」って今さら使うのもちょっと恥ずかしいので、ネット時代のメディア戦略というタイトルにさせてもらった。

なお、ここで書くものは、将来別媒体で発表の予定がある。そのための一種の下書きのようなものと考えて欲しい。まだ自分の中でも煮詰まっていない部分がある。コメント大歓迎。それこそネット時代のメディアだし。

さて、「次のフェーズにおいてはコンテンツがコンテナよりも重要になる(content will be more important than its container in this next phase)」と言ったのは、AP通信CEOのTom Curley(トムカーリー)だ。実は、2004年の発言なので、すでにその「次のフェーズ」に入っているわけであるが、実際にはどのような変化が起こっているかを整理してみよう。

コンテンツとコンテナとコンベヤ

メディアによりユーザーに提供されるものはコンテンツである。これをどのような表現形態で提供するかを決めるのがコンテナである。メディアの場合、コンテナはフォーマットと呼んでも良いかもしれない。ちょうどいろいろな荷物がコンテナに詰められて運ばれる様子を想像して欲しい。

実際にコンテナという形態に包まれて実際にユーザーに届ける部分がコンテナである。

コンテンツとコンテナというのは、AP通信のトムカーリーの話を発端として、いろいろなところで語られているが、コンベアという言い方をしているのは、もしかしたら最初かもしれない。ほかの言い方でも良かったが、英語で表現したときに最初が“C”で揃っているのはきれいなので、コンベアにさせてもらっている。

さて、このように説明されても、今ひとつイメージが湧かないかもしれない。なので、ここでは新聞を例にとろう。

新聞の場合、記事1つ1つがコンテンツである。その記事を(段組みや見出しの大きさや写真の配置などを考えて)紙面に載せる。この紙面がコンテナとなる。そして購読者の元に届けるのがコンベヤとなる。実際には世界に有数の日本全国津々浦々に展開する販売店がコンベヤとなる。

整理すると、新聞という業界では、次の3つが広義のメディアを構成する主要パーツとなる。

  • コンテンツ=記事
  • コンテナ=紙面
  • コンベヤ=販売店

次の図で上がそのコンテンツ、コンテナ、コンベヤを模したものであり、下が新聞社を例にとった場合である。

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垂直統合から水平分散へ

このコンテンツ/コンテナ/コンベヤというのが従来のメディアは垂直統合モデルで実現していた。

垂直統合はIT業界で言うのと同じ意味で考えて構わない。IBMなどが以前はハードウェアコンポーネントからメインフレームというハードウェアやOS、さらにはその上のアプリケーション、顧客向けのシステム構築、そして運用まですべてを担っていたのが垂直統合モデルであり、PCに代表されるように、それぞれ得意なレイヤー(層)でのキープレイヤーのコンポーネントを組み合わせるのが水平分散だ。

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従来は、メディアはほとんどの場合、垂直統合モデルを採用していた。記事はその新聞社の記者が執筆していたし、その記事の掲載先はその社の新聞紙面だった。販売店と新聞社の関係は複雑ではあるが、販売店も事実上新聞社のグループと考えることができ、そこまで含めて新聞社のモデルが構築されている。もちろん、これには例外もある。通信社から配信される記事や写真もあるし、新聞社の記者が書籍を執筆することもある。ただ、ハイレベルで捉えた場合、新聞社に代表されるメディアは垂直統合モデルで運営されていると考えて構わない。

テレビであっても同じだ。テレビ局が制作する番組はCMなどと組み合わされて、テレビというコンテンツで配信される。コンベアにあたるのは地上波やBSの電波やケーブルなどだ。

この垂直統合モデルが水平分散モデルに移行しつつあるのが、今のメディアの状況だ。

新聞記事の場合も、新聞紙面だけでなく、新聞社のサイトにも記事は掲載される。また、ポータルというインターネット上のサイトにも配信される。つまり、複数のコンテナに配信されるようになったのだ。また、読者というユーザーにもインターネットを通じてコンテンツ/コンテナが届けられるようになった。

ネット時代のメディア

もう少し、この水平分散モデルを見てみよう。次の図にあるように、メディアでの水平分散モデルの特徴は

  • マルチソース
  • マルチコンテナ

である。

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マルチソースというのは、ポータルのようなサイト側から見た場合、複数のニュースソースから記事を取得*1し、その中から選択し、コンテナであるサイトに掲載する。垂直統合モデルで自社の記事しか載せないことを基本とした新聞紙面とは大きく異なる。

また、逆にコンテンツである記事を提供する側から見ても、自社のニュースサイト以外にもポータルA、ポータルB、SNS AやSNS Bなどに配信する。したがって、マルチコンテナという状況も一般化している。

さらには、ユーザーである読者に届けるコンベアが双方向となる。従来までは、コンテナ側、つまり供給側からのプッシュのみだったものが、ユーザーから能動的にプルすることも多くなっている。コンベアはインターネットと漠然と書いてしまっているが、ここは実際にはいくつかのシナリオがある。検索エンジン経由であることもあるし、メジャーポータルの場合はユーザーのブラウザの既定のホームページにしていて、ユーザーから定期的にチェックされるということもある。RSS/ATOMなどのフィードでユーザーに配信されることもある。ここでは、それらをまとめて、「インターネット」とだけさせてもらう。今後、この部分についてももう少し分析したい。

次回は

今回は大きな概念のみを解説した。次回はそれぞれのレイヤ(層)についてもう少し解説を加える。さらに、その後、カバーしたいと考えているのが次のような話だ。

  • ブログなどに代表されるマイクロコンテンツの役割
  • エコシステム/ビジネスモデル
  • 水平分散モデルに移行した後のメディアリテラシの在り方
  • ソーシャル化するメディア/双方向コミュニケーションの課題と期待

今回はとりあえず、以上。

[逐次更新]続編は以下の通り。

*1:購入するケースがほとんど