Windows Server World休刊 〜 1雑誌が無くなる以上のもの

少し前になるが、IDGのWindows Server Worldが休刊した。

2009年9月24日

「月刊Windows Server World」休刊のお知らせ

株式会社アイ・ディ・ジー・ジャパン

 平素は月刊Windows Server Worldをご愛読いただき誠にありがとうございます。

 さて、弊社発行「月刊Windows Server World」は、1996年8月の創刊以来、Windowsパワーユーザー、企業システムの管理者、ITプロフェッショナルのための実践活用誌として刊行して参りましたが、2009年12月号(2009年10月24日発売)をもちまして、休刊させていただくことになりました。創刊よりの長きにわたり、「月刊Windows Server World」をご愛読いただいてきた読者様には多大なご迷惑をおかけいたしますが、何卒、ご容赦、ご理解のほどを切にお願い申し上げます。

「月刊Windows Server World」休刊のお知らせ

Windows Server Worldは創刊当初、「Windows NT World」という名前だった。当時はまだ「Windows Word」も販売されていたため、「Windows World」は名前として使えず、そもそもハイエンド/ビジネス向けのWindowsと区別する必要もあって、「Windows NT World」となった。当時はまさかWindowsがその後、バージョンごとに名前を変えるとは思ってもいなかったのだが、その後、Windowsの名前変更に伴ない、「Windows 2000 World」、Windows XP World」そして今の「Windows Server World」となった。(「Windows XP World」はムックだったことを関係者から直接指摘頂いた)

コンピュータ系の雑誌の休刊は相次いでいるので、もはやあまりショックも感じ無くなっているのだが、私にとってのこの雑誌は単なる1コンピュータ雑誌ではない。

日本DECから米国マイクロソフトに派遣された1992年、日経BPの「日経バイト」*1の記者の方が取材で私の米国のオフィス*2にやってきて、当時開発中のWindows NTについて取材された。当時、Windows NTはその先進性を期待する声は多かったのだが、まだ日本語での技術情報が少なく、記者の方と「開発が終わったら、私が書きましょうか」と話した。一時帰国した際に、別の日経BPの編集の方を紹介され、書籍の企画がスタート。それが、35歳より上のWindows技術者の方だったら覚えている方もいるかと思うが、あの「Windows NT完全技術解説」だ。この本は当初、Windows NT 3.1をターゲットに書き始めていたのだが、Windows NT 3.5がすぐに出ることがわかり、Windows NT 3.5をターゲットに企画を変更した。赤い派手な装丁もあって*3、コンピュータ書としてはベストセラーになった。この本はその後、Windows NT 3.51、Windows NT 4.0向けに改訂を繰り返し、私がマイクロソフトに入ってからは、横山さんに引き継いでいる。

私が書籍執筆や雑誌寄稿を開始したのは、この本と前後する。確か、一番最初に雑誌に寄稿したのは、インプレスの「DOS/V Power Report」だったと思う*4。ここには、Windows NTのネットワークアーキテクチャを書いたと思う。見開き2ページ程度の記事なので、ほんの触り程度だったと思うが。

そして、その次に書いた雑誌がこの「Windows NT World」だったと思う。創刊の前に創刊準備号か何かがあり、そこに特集記事を寄稿、そして創刊から連続3回で特集を担当させてもらった。その時の特集は今と違い、スクリーンショットを中心としたものであり、内容的にはそんなに誇れるものではなかったが、それでも日本初のWindows NT専門誌の特集を任せてもらえたのは大変光栄だった。その後、日本DECにいたときは実名で、マイクロソフトに転職してからは一部を除いてペンネームで、特集や連載を担当した。IPv6の記事や802.1Xサービスを解説した記事などは今でも自慢できる内容だ。(「サービス」の特集も良かったはずだとの意見をいただいたので追加した)

1996年からの数年はNTバブルとでも言えるような状況で、それはメディアも例外ではなく、Windows NT World以外にも多くの雑誌が発行されていた。CQ出版翔泳社、ASCII NTなどなど。他媒体にも書いたことはあるのだが、慣れている担当編集者とのほうが楽だったこともあり、IDGに書くことがほとんどだった。「Enterprise Servers World」や「Network World」にも寄稿させてもらった。編集者にはいろいろな人がいるが、ここIDGの編集者の方はみんな優秀だった。各人の許可を得ていないので、エピソードの数々をここに書けないのが残念だが、本当にいろいろと勉強させてもらった。

この雑誌が最も元気だったころ、おそらく2000年ごろ、何周年かを記念したのだったか、六本木かどこかでパーティが開かれたことがあった。その時にもらったパスケースがある。「Windows NT World」のロゴを刻印したものなのだが、今月初めまで私はそれを愛用していた。ただ、かなり痛んでしまい、使用を継続するのが不可能になったので、買い換えた。友人からは「パスケースが壊れるってどういうこと? 普通、壊れないものでしょう?」と言われたが、長年愛用していると壊れるものなのだ。

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こんなボロボロのものを良く使い続けていたものと自分でも思う。愛だね。

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IDGの雑誌は基本オンラインで展開することになると聞いている。検討を祈る。いや、本当に。

<関連投稿>
UNIX MAGAZINE Classic with DVD

*1:これもだいぶ前に無くなってしまった。

*2:DECWestという名前のDavid Cutlerが建てたオフィスで、マイクロソフトのRedmondから車で5分か10分くらいの所。今でもHPのオフィスとして残っている。

*3:一部にはNovelのNetWareの解説書と間違われたとかいう噂もあったが。

*4:調べてみたら、この雑誌はまだあるようだ。うれしいのだが、何か複雑なものも感じる。