ソーシャルネットワークにおける2つのコンテキスト

TwitterFacebookGoogle+といくつかのソーシャルネットワークが登場しており、それぞれ利用も広がっている。

Twitterを好きな人からはFacebookを好きになれないという声が聞かれるし、Facebookのヘビィユーザーの中にはTwitterの用途はもう限定的になったなどと言う人もいる。私自身も一時ほどなんでもかんでもTwitterという感じではなくなってきている。

どうしてだろうと自分の使い方をもとに考えたところ、ソーシャルネットワークにおけるコンテキストをトピックを中心にするケースと人を中心にするケースに分類すると、Twitterが苦手とする部分が明確になってきた。

トピックを中心とするコンテキスト

Twitterの@を中心にするコンテキスト

あるトピックをソーシャルネットワーク上で議論する場合、Twitterではある人のツィートに対して返信(「@関連(@Mentions)」)することで成り立つ対話が使われることが多い。AさんがBさんに@で返信し、さらにそれにAさんが@する。他の人がAさんの元のツィートに対して@で返信する。このような複数の@によるツィートは全員をフォローしている人にしか全体が見えない。そのため、非公式RTと言われる手法を用いて全員をフォローしていない人にもコンテキストを共有することが行われる。

ある程度議論が進んだ時にはtogetter.comにより、まとめられることも多いが、@を含めないでツィートしたときやプロテクトしているユーザーのツィートは当然それに含まれない*1。とりこぼしも良くあるし、一度取りまとめられた後にも議論が続いていた場合に、togetterでの取りまとめが中途半端になってしまうこともある。何よりもこのような手動でのツールに頼らなければいけないこと自身がTwitterが本来このような使われ方を想定していなかったことの現れであろう。

Facebookでは、ある人の発言に対してコメントするだけで、このような特定の人の発言を元にするコンテキストは形成される。

Twitterのハッシュタグ#を中心とするコンテキスト

イベントなどで使われる使われるハッシュタグは人を中心としないトピックベースのコンテキストに利用出来る。Twitter標準の検索が弱いなどの課題もあるが、大人数でコンテキストを共有したいときには重宝する。

最も大きな課題はハッシュタグが登録制ではないことによるコンテキストの混信だ。これは誰も使っていないハッシュタグだと思って使い始めたものの、どうも途中で話が噛み合わない。調べてみると、別のイベントでも同じハッシュタグを使っていた。このようなことはないだろうか。

ついこの間もあるイベントでハッシュタグの混信があった。このイベントは主催コミュニティで従来より使っているハッシュタグがあったので、それを用いるように参加者に呼びかけていたのだが、イベント(実際にはカンファレンス)が2つのトラックに分かれていたので、それぞれにもう1つのサブハッシュタグを使うように途中から方針を変えた。つまり、#aaa*2というのがイベント全体のハッシュタグだったのだが、#no1と#no2というようなハッシュタグを新たに加え、#no1トラックに出ている人には#aaa #no1、#no2トラックに出ている人には#aaa #no2という2つのハッシュタグを加えてツィートしてもらうようにしたのだ。これにより、両方のトラックとも興味のある人は#aaaだけを追えば良く、片方にしか興味ない人は#aaa #no1もしくは#aaa #no2で検索してもらえれば良くなった。

一見良い解決策のように見えたが、#no1と#no2というハッシュタグがそれぞれすでに使われていたものだった。#no1や#no2というハッシュタグを使っていた人たちからすると良い迷惑だったろう。急にすごい勢いで知らない言語*3でコンテキストが埋め尽くされていく。登録制であれば、このような混信は生じない。もっとも、この問題は登録制の問題だけでなく、コンテキストとサブコンテキストという階層化されたコンテキストの問題もはらんでいる。

Facebookでも明解な解決策はないのだが、グループを使ってしまうという方法はある。ただ、このイベントでもFacebookグループも併用していたが、人数制限の問題とFacebookグループのユーザーインターフェースが必ずしもこのような大量だが小さいサイズのコメントを共有するものに適していないという問題のため、ほとんど使われなかった。

人を中心とするコンテキスト

個人の発言を中心とするコンテキスト

Twitterであるツィートをした人を気になって追うようなケースだ。その人の発言をさかのぼって見てみたいということはあるだろう。その際にユーザー名をクリックすることで、もしくはその人のTwitterアカウントのURLを指定することで、全発言を見ることが出来る。TwitterのWeb版も各種クライアントも以前に比べると、特定の人の発言を追うのはかなり簡単になったと思う。Twitterでもさほど問題は感じない。

ちなみに、Facebookにおいても個人の発言を遡るのは、その人のウォールを訪れれば良いので、特に問題はない。

ある集団の発言を中心とするコンテキスト

あるプロジェクトや卒業した学校の同窓会のメンバーなどをTwitter上で集め、その人のツィートをまとめて見れるようにするのには、ハッシュタグを使う。参加する人にそのグループのコンテキストの発言をする際にはハッシュタグを付加してもらうようにお願いすれば良い。ただし、すべての発言はオープンになる。プロテクトしている人が参加したとしても、その人のツィートはその人をフォローしている人にしか見えない。メンバーのみに閉じたコンテキストはできない。そもそもメンバー制という考えも導入できない。

Facebookにおいては、グループを使えば良い。

このように考えてくると、巷ですでに言われているように、やはりTwitterはコンテキストを深く掘り下げていくようなソーシャルネットワークではなく、あくまでも単発のコメントを伝播させるのに適しているソーシャルネットワークであることがわかる。

ただ、今月始めに報道があったように、Twitterも上のようなコンテキストを追いやすくするUIを考えているようだ。私のところにはまだこの新UIは来ていないし、記事を読む限り、あくまでも個人から見えるツィートをよりコンテキストやアクティビティ主体にしようというように見える。そのため、他の人とコンテキストを共有する際の課題は残ったままではないか。

ITmedia: Twitterに2つの新機能 自分のツイートへの反応がリアルタイムで分かるように

*1:少し話がずれるが、プロテクトしているユーザーもあるコンテキストにおいては自分のツィートが誰から見られても良いということがあるだろうが、それは出来ない。

*2:例。実際のハッシュタグは異なる。以下同じ。

*3:もとのハッシュタグを使っている人は欧米の人が中心のようだった。