新しい学習 〜 学び(Learn)、作り(Make)、わかちあう(Share)という体験を通じて 〜

人を教えるということ - Nothing ventured, nothing gained. 」で書いたように、人に何かを教える場合には、座学として情報や知識を知ることと、それを自分のものとして身につけるために試すこと、そして理解したことをさらにほかの人に伝えることにより理解を深めることの3点を組み合わせる必要がある。

プログラミング学習では、言語を学ぶことやプログラミングの概念を知ること、学んだことを使ってプログラミングすること、他人のためにプログラムを提供することや学んだことをさらにほかの人に教えることがこの3点に相当する。

試すこと、すなわちプログラミングを実際行なってみることで、頭では理解していても実際には理解していなところを知ることができる。伝えることによって、自分のプログラムを使ってもらうために必要なことを知ることができる。前回でも触れたように、この2点があることで、座学としての知識が活きる。

そして、何よりも大切なのが、試すことと伝えることが楽しいということだ。

現在の教育に欠けているものは、この学ぶことの楽しさだ。板書されたものを遅れないようにノートに懸命に書き写し、教師が5分に1回は言う「ここ試験に出るからな」の言葉に辟易としながら、時間が来るのをひたすら待つような授業からは得られない楽しさがここにはある。

楽しさがあった場合には、そこに時間的な制約が加わることは、それは苦痛ではない。むしろ、アドレナリンを生成させ、理解と創造性を促進させる良薬だ。ハッカソンが楽しいのはそのためだ。

この「知ること」、「試すこと」、「伝えること」というのは、FabLab(ファブラボ)のカリキュラムでの基本サイクルである、「“Learn(ツールの使い方を学び)”→“Make(ツールを使って実際にものをつくり)”→“Share(その成功体験や失敗体験を他者と共有する)”(How to Make (Almost) Anything (ほぼ何でもつくる方法) 2010年度 体験記 から)」に通ずるように思う。

ちなみに、ファブラボのロゴデザインは、この「学び(Learn)、作り(Make)、わかちあう(Share)」を現しているという。

FabLab Logo

ファブラボは、パーソナルファブリケーションというコンセプトのもと、自分の・自分たちのためのものづくりを実現する施設であり、コミュニティである。「自分のため」であるが、これを実現するためには、他者の力が必要である。これをファブラボでは「DIWO(Do It With Others)」と呼ぶ、さまざまな専門性を持つ人間が集まる場所を提供することにより実現している。

プログラミング教育の話からファブラボの話に、話題が変わってしまったように思われるかもしれないが、このファブラボで行われている自分の作りたいものを作るための技術を学ぶ手法というのは、プログラミング教育においても参考になる部分が多いように思う。

ファブラボは、親しい人に関わりのある人がいるので、今度こそちゃんといろいろ教えてもらおう。私はまだ本を読んだだけ ;-)

FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)

FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)