サイトサーチアナリティクス

サイトサーチアナリティクス  アクセス解析とUXによるウェブサイトの分析・改善手法

サイトサーチアナリティクス アクセス解析とUXによるウェブサイトの分析・改善手法

これは、少し以前に翻訳者の1人である池田清華さんより贈呈いただいていた本で、サイトサーチについての解説がされている。先に感想を言ってしまうが、大変おもしろかった。

さて、書籍タイトルにあるサイトサーチであるが、これはサイト内サーチと呼び変えたほうがわかる人もいるかもしれない。サイト訪問者がそのサイト内コンテンツを探すために行う検索操作(サーチ操作)のことである。

一般のインターネット上のGoogleやYahoo!、Bingのような検索エンジンから見つけられやすくするための解析技術は広く知られているが、それと同じくらいに価値のあるサイトサーチについてはあまり取り上げられていなかった。いや、取り上げられていなかったというよりも、あまり重要視されていなかったというのが正しいのかもしれない。

一般のアクセス解析SEOはどのように自サイトが発見され、ユーザーが訪れるかという導線の部分を明らかにし、それを改善することに役立つ。これが言わば集客の部分だとするならば、サイトサーチは顧客のロイヤリティを高めるため、つまりリテンションを維持することに役立つ。

そもそも、自サイトでユーザーが検索を行うということは、ユーザーがその情報を欲しているということである。これ以上の貴重なマーケティングデータは無い。検索の結果、その情報を見つけ、辿り着けているのならば良いが、そうでないならば、その情報がサイト内にあるのか無いのか、あるのならば何故見つからないのか、無いのならば、それをサイト内で用意すべきなのかどうか、そういうことを検討すべきである。

本書はこのサイトサーチだけに絞って、1冊にまとめあげた貴重な本である。私の知る限り、この本以外にサイトサーチだけを詳細に解説した本は無い。必要なことはすべて網羅されている。

もし、サイトサーチに直接携わらなかったとしても、本書で述べられているデータからユーザーの行動とその背景を推理する手法を学ぶことは、ほかのデータ解析一般についても役立つだろう。ただのデータであっても、ほかのデータと組み合わせることにより、今までぼんやりしていたユーザーの行動原理がはっきりと浮かび上がってくる。

また、サイトサーチはSEOと異なり、UXとの関わりも深い。本書の副題が「アクセス解析とUXによるウェブサイトの分析・改善手法」であることからもわかるように、本書でもUXについて最後の1章を割いて解説もされている。UXとの関わりということで言えば、たとえば、頻繁にアクセスされる情報が、そもそも検索されているということは、UX上の課題がそのサイトにはあるかもしれないのだ。

訳本であるが、大変読みやすい。残念なのは、検索にまつわる日本語特有の課題については、さすがに言及できていなかった点か。だが、本書は個別の分析テクニックだけを紹介するわけでなく、サイトサーチ分析の哲学ともいうべき「考え」の部分を丁寧に解説されている。これをどのように発展させ、個別のサイトにあったものにしていくかは、読んだ人次第であろう。