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データを解き放て 〜 オープンデータで行こう

津田くんという若者がいる。石巻に住む大学生だ。釣りが好きなので、周りからはフィッシュと呼ばれている。

彼はイトナブという石巻の次世代を担う若者を対象にした拠点でプログラミングを勉強している。

IT技術を学ぶ東北Tech道場の成果発表会が先週東京で行われたのだが、そこで彼が披露したアプリケーションが「つなっぷ」だ。石巻市内でこのアプリを起動すると、その地点での東日本大震災の際の津波の高さを教えてくれる。残念ながら、データの関係で、このアプリは石巻限定だ。

 アプリ制作のうちプログラミング部分でも難儀していたようだが、津波データの取得にも苦労したらしい。

石巻市内の各地点での津波データは公開されていない。そこで彼は石巻市役所に掛けあって、そのデータを入手した。もらったのは紙に印刷されたデータ。それを彼は1日半かけて自分でデジタルデータとして入力した。

東北Tech道場の成果発表会で私は彼に次のようにアドバイスした。

「アプリとデータを分離して、データをオープンデータとして公開してみよう。それにより、誰かが別の地域に対応したデータを用意して、あなたのアプリは石巻限定で無くなるかもしれないし、逆にあなたの石巻のデータを使った別のアプリを開発する人が出てくるかもしれない」

オープンデータとは結局はこういうことなのだ。

政府の肝いりでオープンデータを推進する動きが進んでいるが、まだその利点が理解されないことも多い。オープンデータとして公開されていても、これじゃあ使えないなと思うことも正直多い。実際に使われる用途をいくつか想定してみる*1ことがデータの内容や公開フォーマットの検討の両方で重要だ。

また、紙でしかデータが渡されなかったというところからも別の課題を見ることができる。今どきデータの管理を完全に紙でやっているところなど、まず無い。今回も印刷された紙が渡されたということからわかるように、役所内ではデジタルデータとして扱われている。これを外部に提供するに際して、紙にしてしまうというところに、データの公開プロセスが現状に追い付いていないことがわかる。おそらくは、行政データを住民に提供する際に、役所内では紙ベースの資料を公開する手続きがあるのだろう。USBメモリーやネットを経由しての提供というのは想定されていないのではないだろうか。実際、住民持ち込みのUSBメモリーをPCに装着した結果、ウィルスに感染してしまうというような危険性もあるし、メールなどでの提供を許すと本来は許可されていない情報が漏洩するという心配もあるのかもしれない。公務員としての仕事を全うしようとすると、勢い一番保守的な紙での提供にならざるを得ないという事情もあるように思う。

すべてのデータを自治体や国が公開しなくても構わない。元データをその後の加工がしやすいように、提供さえしてくれれば、それをオープンデータの形にして提供するのは、ITの専門家が行うことも可能だ。様子を見て、その後に自治体や国の正式な業務として、オープンデータの提供を考えてもらうというのも、1つ現実的なアプローチだろう。

 

津田くんは、私の呼びかけに応じて、すぐに各地の津波データを収集・整理してくれる人の募集を始めている。

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Facebookでの彼の呼びかけにも、多くの人が賛同し、進め方やフォーマット*2についての助言を与えている。

データを解放し、多くの人の協力を求める。これがオープンデータの魂だ。

今、彼のデータは彼の手を離れ、彼の愛称であるフィッシュのように、大海を自由に泳ぎ始めた。しばらく後に、大きく育った姿を見れるのが楽しみだ。

【追記 2013/08/19 8:15】

Facebookグループ つなっぴんぐ★津波のデータを被災地から世界へ が作成された。ここで議論が開始されている。

*1:今回は実際にアプリまで同時に開発されていたというある意味理想形だ。

*2:現在の彼のアプリはGeoHexを使っているが、収集するデータは別フォーマットでも良いだろうなどという意見も出ている。