ネットと文明 第9部 善意と実利 5 - 自由のワナ

第9部の最終回。コンプライアンス強化による社員の監視が進む現状を紹介。また、無防備な状態で放置される無線LANの設置状況も明かされる。さらに、SNSの世界では、ミクシィで個人情報を友人のみなどに制限するケースが増えた結果、旧友を探すなどの楽しみがなくなってしまったという利用者の声が紹介される。

これらをまとめる形で、今回の連載は次のように締められた。

 「車の出現は車の犯罪の扉も開いた。コンピューター犯罪が増えたのも当然だ」。米司法省はハイテク犯罪が増え始めた九六年、車の導入期に例えてこう分析した。免許制や規制で対処してきた車社会のように、ネット社会も発展できるのか。善意と実利の葛藤を克服しなければならない時が来る。

今回はタイトルにあるように、「善意と実利」という観点でいくつもの事例が紹介された。個人的には「善意」の部分はわかるが、今、それに対比されるのが、「実利」なのかは疑問だ。「実利」は「善意」と共存可能だ。もし言うならば、善意だけでは、安全/安心が得られなくなってきているというのが適切だろう。その意味では、上に引用した部分の「免許制」や「規制」で実社会が対処したのと同じように、インターネットにも新たな秩序が求められているのだろう。匿名の利用などの身近な例からはじめ、利用者自身が新たなインフラの秩序を形成していかなければならない。…というようなことが、以前読んだ「インターネットの法と慣習 かなり奇妙な法学入門」にも書かれていたことを思い出した。