Windows Vistaとイノベーションのジレンマ

既存顧客の声を聞きすぎるあまり、新しい顧客による新しい需要に気づかず、新規参入者にマーケットを奪われてしまうことを『イノベーションのジレンマ』と提唱したクリステンセン教授の話が日経BP ITProのサイトに載っていた。

クリステンセン自身が語ったのではなく、記者の意見として書かれているのだが、Windows Vistaイノベーションのジレンマの典型ではないかとこの記事は書いている。

 さて,IT業界はイノベーションのジレンマのテーマパークのようなところである。最近もこの業界を見渡すと,イノベーションのジレンマの典型例ではないかと思われる製品がいくつも登場している。例えば,明らかに性能過剰・機能過剰の「PLAYSTATION 3」と「Windows Vista」は,イノベーションのジレンマの次期改訂版に載ってもおかしくない大型事例であろう。

<中略>

 特に,PLAYSTATION 3Windows Vistaに関して興味深いのは,発売前から何人もの人がブログ等で「これはイノベーションのジレンマではないのか」との懸念を表明し,販売が始まると「やっぱりイノベーションのジレンマだったか」と言われている点だ。つまり,多くの人々が注目する中で,いわば“劇場型”で起こったイノベーションのジレンマの事例なのである。

「イノベーションのジレンマ」の著者を生で見てきた(日経BP ITPro)

Windows Vistaイノベーションのジレンマの産物かどうかについては、あえて私は意見を言わないで置く*1が、だが、たとえそうであったとしても、まだ破壊的イノベーション(Disruptive Innovation)ははっきりとは見えていない。Windows Vistaの普及が遅々として進まなかったとしても*2、それはWindows XPがしばらく使い続けられるだけであり、Linuxデスクトップに移ることは多くないだろう。ただ、Windows Vistaの普及が予想外に遅いようだと、SaaSシンクライアントの組み合わせが、Windows Vistaの需要を奪うかもしれない。

イノベーションのジレンマに対する危機意識はマイクロソフトも当然持っている。その答えはWindows Live/Office LiveとWindowsクライアントを中心とした、Software Plus Servicesなのだろうか。Live戦略は今のままでは正直競争力が無いように思うが、それはWindowsクライアントとのカニバリゼーションを恐れるためか。

マイクロソフトの中島氏が1年半前以上になるが次のように書いている。イノベーションのジレンマの事実に気づいてしまったが故に競争力がそがれているのではないと思いたいが、思い当たるふしがあるようなないような…。

 ちなみに、この本の唯一の欠点は、大きな会社でこの本を社員に配ると、私の様に辞めてしまう人が出る可能性だ。大企業の経営者は、そのリスクを覚悟した上で社員に読ませる必要があるかも知れない。

図解、イノベーションのジレンマ(Life is beautiful)

開発していた1人なので悪口を言うと、自分に跳ね返ってくることになるのだが、ネット時代のOSとしてはもう少し違う形もあったのではないかと思う。

WinHECのニュースが聞こえてくるが、そのどれもが従来のOSの進化の延長にしか見えない。むしろ、同じマイクロソフトのイベントでも、MIX07のほうがわくわくする発表が多かった。

マイクロソフトも大きく方向転換を試行しているのか。(いろんな意味で ;-))要注目だ。

*1:NDAがあるからね

*2:マイクロソフトは順調だと言っている