プロなのに、ツッコミが足りないよ

昨年末に携帯電話の盗難について2つの記事が書かれていた。

1つが読売新聞による記事

「携帯電話盗難相次ぐ」

県南、県西部の携帯電話ショップで、秋口からNTTドコモ、ソフトバンクモバイルの新品の携帯電話が盗まれる事件が連続発生している。未遂を含めると9月から10件発生し、計約560台が盗まれた。内蔵のカードを差し替えるだけで自分の携帯として使える両社の機種に被害が集中しており、県警は犯行の手口などから、同一犯の可能性もあるとみて捜査している。

<中略>

 県警捜査3課の調べなどによると、被害は9月と12月に集中している。9月10日には、古河、常総両市のドコモショップの出入り口ドアがバールのようなものでこじ開けられるなどして、約340台が盗まれた。6日後にはつくばみらい市のショップが荒らされ、ドコモの端末約60台が持ち去られた。店内にはKDDI(au)などの携帯もあったが、被害はなかったという。

県南、県西部って書かれていることからわかるように、茨城県版だ。ここで重要なのが、NTTドコモソフトバンクモバイルだけが被害にあっていて、KDDI auは何故被害にあわないのだろうという疑問だ。記事ではちゃんとこれに対しても言及されている。

 被害を携帯電話会社別にみると、ドコモが約460台、ソフトバンクが約90台。携帯電話店などによると、盗まれた両社の機種は、電話番号やメールアドレスが記録された「SIMカード」を差し替えれば、店頭で手続きすることなく、自分の携帯として使える。新しい端末に替える際に店頭での本人確認などが必要になるauは被害が確認されておらず、転売市場で需要があり、転売しても足がつきにくいドコモとソフトバンクが狙われているとみられる。

なるほど。KDDI auはSIMカードを挿入するだけでは、アクティベーションされないのね。ふむふむ。

一方、その2日後に書かれた日経新聞の記事。

ドコモ、盗難携帯の通信許さず 来春メド接続停止

 最新の携帯電話機の大量盗難事件が相次いでいる問題で、NTTドコモは来春をめどに、盗まれた携帯電話機では通話やメールができないようにする方針を固めた。盗品は、インターネットの競売サイトなどで安く転売されるケースが多いが、購入しても使えないようにすることで、盗難防止につなげる。
 ドコモの場合、電話番号やメールアドレスなどのデータが入力された「SIM(シム)カード」と呼ばれる部品を差し替えると、ドコモ用なら他の電話機でも自分の携帯電話として使用できる。ドコモによると、最近の1年間で関東甲信越地区だけでも約40件の盗難被害が発生。一度に100台以上が盗まれるケースもあったという。

こちらは、盗難が多発している状況を鑑み、NTTドコモが対策を講じるということを報じたものだ。多発する携帯電話の盗難への抜本的な解決になれば良いなと思うが、ここにはNTTドコモ以外のキャリアの対応が書かれていない。

ただ、日経新聞は3分の1ルールというものを設けており、ネット上には紙面の3分の1しか載せずに、載せる記事も分量を3分の1にする*1。なので、紙面を見てみた。紙面では、確かに、これだけではなく、ちゃんと追加の情報が載せられている。

 今回は携帯電話には一台ずつ固有の機体番号が割り振られているのを利用して、通話などをできないようにする。販売店から盗まれた端末の機体番号をコンピューターに登録。盗品リストにある携帯電話から、基地局に対して通話やメールの接続要求があった場合は接続しない仕組みにする。ソフトバンクモバイルは今月から同様の対策を実施しているという。

ほぅ。ソフトバンクモバイルは対応済みなのか。今月っていうのは、12月のことだから、すでに効果が出ているのだろうか。

だが、Googleニュースの検索(http://news.google.co.jp/news?hl=ja&ned=jp&nolr=1&q=%E7%9B%97%E9%9B%A3+%E6%90%BA%E5%B8%AF%E9%9B%BB%E8%A9%B1+%E3%82%BD%E3%83%95%E3%83%88%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%AF&btnG=%E6%A4%9C%E7%B4%A2)をみると、そうでもないようだ。

この検索結果は1月2日現在のものである。しばらくしたら結果が変わってくるだろうから、スクリーンショットも載せておこう。

う〜む、12月から対策されているのに、ソフトバンクモバイルの端末が大量に盗難にあっているのは何故なんだろう。([追記]これについては、Googleニュースの検索の結果にもあったが、中国で盗難携帯端末が販売されているからだった。つまり、キャリア側の対応だけでは阻止できないものだ。)

また、そもそも日経新聞のほうでは、KDDI auについてはまったく言及されていない。私のようなauユーザーは絶対に気になるはずだと思う。auに聞けばすぐわかる話だし、そもそも検索しただけでも、上に紹介したようにYOMIURI Onlineの記事で、auは対策が必要ない(対面での本人確認がされている)ことがわかるだろう。

日経新聞の紙面版に関しては、文字数制限があったのかもしれない。だが、紙面では、この記事は一面に載っていた。一面に載せるほどのニュースバリューのある記事ならば、もう少し読者が必要としている情報を載せるようにしたらどうだろう。

というようなことを、「メディアリテラシー」に新たな定義が必要かもしれないを読んで、考えた。

マスメディアを叩いている人の多くはむしろ、マスメディアを高く評価しすぎなのではないか。あるべき理想の姿とちがっているから叩くのだろうが、そもそもマスメディアはそれほど「神格化」されるべき存在ではない。メディアに過剰な期待を抱かないこと

「メディアリテラシー」に新たな定義が必要かもしれない より

*1:出典は「東洋経済 2008年4/12号」。確認したら、正確には「3割ルール」だった。「ネットに掲載する記事の本数は3割だけ、1本の記事についても3割分しか見せない、というチラ見せのルールだ。」(東洋経済より)