ルーティングをSNSで体験できるIP over Social Network

体を使った情報授業」で書いたように実際に体を使ってネットワークやOSの動作を学べると良いが、大人になると、なかなかそうもいかない。

ならば、SNSの上でのSocial Graphを利用して、ネットワークの仕組みを楽しみながら学ぼうというアプリケーションが登場した。それが、"IP over Social Network"だ。

現在のところFacebookでのみ動作するが、この"IP over Social Network"は、仮想ルーターを作成し、ほかのFacebook上のユーザーが同じように作成した仮想ルーターとの間でIPv6ネットワークを構成することができる。

IP over Social Networkのメイン画面は以下のようになっている。

IP_Over_Social_Network1

赤字で"It has been a long time since you last run the CPU of your router by clicking on 'Run the CPU' on the above menu... This network works fine only if every user regularly runs his/her router CPU; else, packets are blocked in queues and routing protocols time out."と書かれている部分にこのアプリケーションの本質が現れている。ざっと訳すと、「上のメニューから'Run the CPU'をクリックして、あなたのルーターのCPUが動かされてから長い時間が経っています。このネットワークはすべてのユーザーが定期的にルーターのCPUを動作させたときに始めて正常に動作するようになっています。そうでないと、パケットはキューの中でブロックされ、ルーティングプロトコルはタイムアウトを起こしてしまいます」という意味だ。

つまり、このアプリケーションのユーザー1人1人がルーターとしてきちんと動作することが求められる。

仮想ルーターはインターフェイスの先に自分の近隣ルーターを設置して始めて機能する。そのため、このアプリケーションをインストールしたユーザーは自分の友人にこのアプリケーションを紹介するか、明示的にインターフェイス設定を行い、近隣ルーターを登録する必要がある。次の画面がそのようにして出来上がったインターフェイス一覧の画面だ。

IP_Over_Social_Network2

IPv6のパケットがこの近隣ルーターを通じて、Facebook上に出来上がった仮想IPv6ネットワークを流れることになる。

このアプリケーションはまだ開発されたばかりのベータ版のため荒削りのところが多いのだが、それでも秀逸なのが、できるだけ本物のルーターコンソールを模しているところだ。

たとえば、syslogまで用意されている。

IP_Over_Social_Network4

また、WizardモードではCISCO IOSのコマンドをエミュレーションしている*1

IP_Over_Social_Network3

さらに、Diagnostics画面では、pingやtracerouteを行うことができる。

IP_Over_Social_Network5

ping/traceroute先として、Facebook上でこのアプリケーションを利用しているユーザーもしくは実際のインターネット上のIPv6ホストを指定することができる。

実際にpingやtracerouteを実行した結果の下の画面では、途中から実際のインターネット上のルーターを経由していることがわかるだろう。

IP_Over_Social_Network6

ウェブサイトはできるだけ多くのユーザーに頻繁に訪れてもらうためにいろいろと工夫をするが、このアプリケーションは自分がきちんとルーターのCPUを起動しないと、ネットワーク全体に迷惑がかかってしまうため、いやでも頻繁に訪れることになる*2

実際、アプリケーションが登場して間もないが、すごい勢いでユーザーが増加している。次のグラフはAllFacebookより。

IP_Over_Social_Network7

ルーター好き、もしくはパケットフェチのように、ニッチなユーザー層を狙っているにしては驚異的ではないだろうか。

あれ、でも、これってチェーンメールと似ている? (^^;;;

*1:実装されていないコマンドが多いが。

*2:実際にはマイペースの人も多いが。