プレゼンの達人への道 7カ条 - ただし、聴衆編

世にプレゼンの達人への道を説く書籍や資料は多くある。私もプレゼンをする機会が多いので、伝えたいことはある。だが、今回は視点を変えて、プレゼンに聴衆として参加する側の心得を書いてみる。

プレゼンはプレゼンターからオーディエンス(聴衆)への一方通行で行われるものではない。冒頭に「今日はインタラクティブ(対話型)で行きましょう。途中、わからないことがあったり、ご意見があったらりしたら、遠慮無く割り込んでくださいね」などと言わなくても、プレゼンは双方向のものだ。声を出して質問や意見を言わなくても、その表情や態度からプレゼンターは聴衆の気持ちを察し、それによってプレゼンの内容も変わっていく。レベルの高いプレゼンターであれば、意識して、内容をダイナミックに変更していくし、そうでないプレゼンターであっても無意識のうちにプレゼン内容や伝え方が変わる。言うならば、プレゼンはそこに参加する全員によって構成されるものなのだ。プレゼンの成否は聴衆として参加するあなたにもかかっていると言える。

そこで、ここでは、あなたがプレゼンに参加する立場になったときに、とるべき行動について整理する。

  1. 時間より前に入り、席を確保する。しかも、できるだけ前の方の席を確保する。
    名プレゼンターでないと、途中で眠くなってしまうこともあるかもしれない。だからこそ、前の席を確保し、自分を追い込む。後に述べるプレゼンターとの無言の対話のためにも、良い席を確保することが重要だ。プレゼンターに顔を覚えてもらえると、後で質問するときにも役立つかもしれない。
  2. うなづいたり、プレゼンターの目を見たりして、積極的にプレゼンに参加する。
    プレゼンターは壇上では孤独だ。自分の話に興味を持ってもらえているかどうか、理解してもらえているかどうかなど、不安を抱えながらプレゼンをしている。プレゼンターを応援する意味でも、積極的にプレゼンに参加しよう。話が理解できたり、賛同できたりしたら、うなづく。プレゼンターと目があったら、目をそらさない*1。無言で構わないので、話をきちんと聞いていますよ、理解していますよということを伝えると良い。プレゼンターから質問が投げかけられたら、積極的に回答する。たとえば、「XXXを使っている方、どれくらいいらっしゃいますか?」などを問いかけられることが多いだろう。だらだらと挙手するのではなく、はっきりとわかるように挙手する。プレゼンターが冗談を言ったら、つまらなくても笑ってあげよう。
  3. 腕を組まない。
    対称的にプレゼンターがプレッシャーに感じるのが、恐い聴衆だ。ガンを飛ばしているように目付きの悪い人や冗談を言っても顔がピクリともしない人。そこまで態度が悪い人はそう多くはいないが、腕を組んで聞いている人は結構いる。これはプレゼンター側にも言えるのであるが、腕を組むというのは、相手を威嚇する効果がある。または、相手との間に壁を作ることにもなる。手は下げてノーガード戦法でお願いしたい。
  4. メモを取る。
    これはプレゼンの内容にもよるが、重要と思われるところに懸命にペンを走らせているのを見ると、プレゼンターは安心する。また、そのペンの動きを見て、自分の話が速すぎないかどうかを確認することもできる。聴衆としては、メモを取り終えたなら、きちんと顔をあげて、プレゼンターのアイコンタクトに応えよう。たまに、顔さえあげられないほど多くの情報を詰め込んでしまっているプレゼンがあるが、それは聴衆側の問題ではなく、プレゼンター側の問題である*2
  5. 質問をする。
    プレゼンが期待に沿うものになるかどうかは、聴衆側がリアルタイムにフィードバックをプレゼンターに返せるかどうかにもかかっている。プレゼンターが途中でも質問をどうぞと言っている場合には遠慮無く質問をしよう。そうすることで、自分が期待している内容を確実に得ることができる。内容がちょっと違うなと途中で思った場合でも、軌道修正をかけることが可能である。もっとも、聴衆はあなた1人ではないので、内容が離れすぎていないように注意する必要はある。もし、途中での質問ができないような場合(たとえば、極めて大きな会場で行っているプレゼンのような場合)でも、質問をするつもりで聞くと良い。傾聴(アクティブリスニング)という言葉がある*3が、ただ、ぼーっと聞いているのではなく、後で質問するつもりで聞いていると、回答となる情報が話されていないかなど聞き漏らさないように積極的に参加することになる。プレゼン後に実際に質問するもよし、結果的に質問しないで済んだならば、それはそれでよし。どちらであっても、質問するつもりで聞くかどうかで、聞く態度は大きく変わる。
  6. (後ほど)ブログ/レポートを書く。
    質問をするつもりで聞くというのと重なるが、あとで得たものをブログやレポートでまとめるつもりで聞くと、最後まで積極的な参加が可能となる。ブログやソーシャルメディアなどで多くの人に公開する形式のほうが、聞き逃した部分を誰かが補完してくれるかもしれないし、内容に対してのフィードバックも得られるかもしれないので、望ましい。
  7. これがもっとも大事なことであるが、つまらなかったら途中で退席する。
    プレゼンに参加する目的は、苦痛な時間に最後まで耐える精神力を養うためではない。内容も無い、お経のような語り口で進められるプレゼンに最後まで参加する義務はない。時間の無駄だ。傾聴を試み、プレゼンターにも無言で応援をしても、まったく効果がなく、10分以上過ぎたならば、いっそのこと退席してしまおう。プレゼンターに失礼ではないかなど気兼ねする必要ない。そのようなプレゼンにしてしまったのは、プレゼンターの責任でもあるのだから。また、つまらなく無くても、内容が期待するものでなかった場合には、退席してしまうのが良い。プレゼンターとしても、部屋にいながら内職されたり、居眠りをされるくらいならば、退席してもらったほうが嬉しい。

以上、プレゼン参加者としての心得をまとめてみた。参考になれば。
異論/反論もあろう。コメントなどで知らせて欲しい。

*1:出来れば微笑むくらいが良い。あまり微笑み過ぎると、プレゼンターを気味悪がせるので、してはいけない。

*2:私も良くやってしまう

*3:後に専門家から指摘されたが、ここでの「傾聴(アクティブリスニング)の用法は間違っている。本来、この用語は「臨床心理学から来ており、クライエントの話を否定することなく聞いて、人格を認めてあげることで、クライエントが話しやすくなるような技法をさしている」。