チームで倫理を議論するツールを作りました ― ケーススタディカードとPRDテンプレート

先日、書籍「プロダクト倫理」と無料チェックツール(productethics.jp)を公開しました。チェックツールは、8つのテーマについてYes/Noで答えていくだけで、自分のプロダクトの倫理的リスクをレーダーチャートで可視化してくれるものです。

takoratta.hatenablog.com

公開してから自分でも繰り返し使ってみて、気づいたことがあります。チェックリストは「気づき」を得るには良い道具ですが、気づいた後にどうするかが難しい。一人でYes/Noを付けて終わりでは、結局「読んで終わり」と同じです。

書籍の中でも書きましたが、倫理的な問題の多くは、個人の善意だけでは解決しません。チームで議論し、組織として判断する必要があります。チェックツールの次のステップとして、「チームで使える道具」が要ると感じていました。

そこで、2つのツールを追加しました。

ケーススタディカード ― 1枚引いて、チームで10分議論する

ケーススタディカード

書籍の各章から、議論を呼びそうな代表的な事例を16枚のカードにまとめました。

各カードには、事例の概要、倫理的論点、そして「議論の問い」が3つ載っています。どの問いにも正解はありません。チームの中で意見が割れることこそが、このカードの価値です。

カードを引いた画面

使い方

2つのモードがあります。

「1枚引く」は、ランダムにカードを1枚引くモードです。チームミーティングの冒頭で1枚引いて、10分だけ議論する。これだけで、チームに「倫理について考える習慣」が少しずつ根づいていきます。

「一覧で見る」は、全16枚を一覧表示するモードです。4つの原則(自律性、透明性、公正性、安全性)や章ごとに絞り込めるので、今日のテーマに合ったカードを選ぶこともできます。

一覧モード

議論済みの管理

カードごとに「議論済み」をマークできます。次に引くときは未議論のカードから優先的に選ばれるので、数か月かけて全16枚を一巡する使い方もできます。状態はブラウザに保存されます(データの外部送信はしません)。

プロジェクターに映して使う

右上の最大化ボタンを押すと、画面幅を広げてフォントを拡大できます。会議室のモニターやプロジェクターに映して、チーム全員で見ながら議論する場面を想定しています。

最大化モード

紙で使いたい場合は、一覧モードの印刷ボタンから全カードを印刷することもできます。

こんな使い方を想定しています

  • チームミーティングの冒頭10分で1枚引いて議論する「倫理ウォームアップ」
  • 新機能の企画段階で、関連するテーマのカードを選んでリスクを洗い出す
  • 新メンバーのオンボーディング時に「うちのチームは倫理も考える」という文化を伝える
  • 四半期に1回、全カードを振り返る「倫理レビュー」

大事なのは、正解を出すことではなく、「この問いについて自分たちのチームはどう考えるか」を言語化するプロセスそのものです。

PRDテンプレート ― 業務に倫理チェックを組み込む

もう1つ、もっと地味だけど実用的なものを作りました。倫理リスクチェックセクション付きのPRDテンプレートです。

PRDテンプレートをダウンロード(Markdown形式)

テンプレートの本体は末尾の「倫理リスクチェック」セクションです。4つの原則それぞれについてチェック項目と懸念事項の記入欄、総合判定テーブルを用意しています。自社で既にPRDテンプレートがある場合は、この倫理リスクチェック部分だけを既存テンプレートに追加して使ってください。PRD本体部分は一般的な構成の参考例として付けています。Markdown形式なので、Notion、GitHub、Confluenceなど普段の環境にそのまま持っていけます。

ケーススタディカードが「考えるきっかけ」を作るツールだとすれば、PRDテンプレートは「考えた結果を記録に残す」ツールです。

その他の改善

  • サイト全体の説明をまとめた「このサイトについて」ページを新設しました。初めて訪れた方はこちらからどうぞ。
  • チェック結果画面に「印刷 / PDF保存」ボタンを追加しました。チェック結果をレポートとして社内に共有できます。

使ってみてください

すべてのツールは無料で、データは一切収集・送信しません。

チェックリストで「No」が気になったら、書籍「プロダクト倫理」でその背景にある構造を掘り下げてみてください。

使ってみた感想やフィードバックがあれば、ぜひ教えてください。