「プロダクトマネジメント 行く年、来る年 2025」で話したこと

昨日(2025/12/19)、Newbeeの「プロダクトマネジメント 行く年、来る年 2025」というイベントに登壇した。パネルディスカッション形式のイベントで、主催者から事前にお題が渡されていた。お題は以下の3つ。

  1.  2025年のプロダクトマネジメントを一言で表すと?
  2. AIで日本と世界のプロダクトマネジメントに差は縮まった?ひろがった?
  3. 2026年のプロダクトマネジメントはどうなる?

普段はこのようなパネルディスカッションには、基本ぶっつけ本番で臨むのだが、今回は珍しく自分の考えを整理し、手元にカンペの形で見れるようにしておいた。

以下がそれ。

1. 2025年のプロダクトマネジメントを一言で表すと?

フリップに書く言葉

プロダクトマネジメントの多様化

説明

  1. 業界の多様化(Where)
    • プロダクトマネジメントがIT業界の専売特許ではなくなった
    • ソフトウェアが価値の中核になることで、従来ITと距離があった業界でも不可避に
      • 自動車:SDV(Software Defined Vehicle)への移行
      • 金融:「金融ジャーナル」と「金融時事用語集」に執筆。オンライン化(スマホアプリが当たり前に。セキュリティも強化)
      • 公共:デジ庁やGovTech東京の例。マイナアプリや東京アプリ
      • 一般: プロジェクトマネジメントのコミュニティからの登壇依頼やHBRへの寄稿
    • 「ITのやり方」ではなく「価値創造のやり方」としてPdMが広がった
  2. 担い手の多様化(Who)
    • 生成AIの普及により、PdM職でなくてもPdM的な仕事が可能になった
    • 生成AIが肩代わりする領域
      • 仮説整理・壁打ち
      • 調査・要約
      • ドキュメント作成
      • 議論のたたき作り
    • 結果として
      • 「PdMであること」と「PdM職であること」が分離
      • PdMが特定の役職ではなく、組織能力として広がった
  3. 民主化と同時に起きた“高度化”
    • 作る・試す・学ぶコストが劇的に下がった
    • その結果、差が出るポイントが変化
      • 何をやるか
      • 何をやらないか
      • どこに賭けるか
    • プロダクトマネジメントは
      • 誰でも触れるようになった一方で
      • 本質的な重要性はむしろ増した

2. AIで日本と世界のプロダクトマネジメントに差は縮まった?ひろがった?

フリップに書く言葉

回答不能(あえて言うなら、変わらない)〜 縮まったのは手段。差が残るのは成功させる力。

説明

  1. 前提の整理:比較自体の難しさ
    • プロダクトマネジメントは国・地域・業界によって前提が大きく異なる
      • 米国:スタートアップ/VC主導、急成長前提
      • 中国:プラットフォーム×スピード×国家文脈
      • 日本:既存事業・組織・顧客との関係性を前提
    • そのため単純に「差が縮んだ/広がった」と測ること自体が乱暴
  2. それでも置ける共通の評価軸
    • 方法論やプロセスではなく、世界共通で見られるものは一つだけ
    • それは「そのプロダクトは成功しているか」
      • 使われ続けているか
      • 継続的に成長しているか
      • 事業としてスケールしているか
  3. その軸で見たときの実感
    • 日本でもプロダクト事業を伸ばす企業は増えている
    • ただし、世界的な大成功例として即座に名前が挙がる数はまだ多くない
    • 一方、海外を見ても
      • AI銘柄は多数生まれているが
      • AI以外で新顔が次々に世界をひっくり返している印象は限定的
      • 既存の巨大プロダクトがAIでさらに成長する構図も多い
  4. 結論:AIが変えたもの/変えていないもの
    • AIによって
      • 開発手段
      • 試行錯誤のスピード
      は平準化しやすくなった
    • 一方で
      • 価値に賭ける判断
      • 捨てる決断
      • 組織を動かす力
      といった「成功させる力」の差は依然として残っている

3. 2026年のプロダクトマネジメントはどうなる?

フリップに書く言葉

境界を設計する

説明

  1. 生成AI前提での「仕事の境界」設計
    • 生成AIを使ってプロダクトを作ること自体は前提条件になり、差別化要因ではなくなる
    • 問われるのは「生成AIを使うか」ではなく「何を生成AIに任せ、何を人間が引き受けるか」
    • プロダクトに生成AIを組み込む際には、以下を総合的に判断する必要がある
      • LLM/AIエージェントの特性理解
      • コンテキスト設計・プロンプト設計
      • 精度・レイテンシー・コストのトレードオフ
      • データの扱い、プライバシー保護、期待値コントロール
    • これらは従来のComputer Scienceの延長ではなく、「知能の振る舞いを設計する」新しいプロダクトマネジメント能力
  2. 人間とAIエージェントの「チームの境界」設計
    • AIエージェントがプロダクトチームの一員として常在する前提になる
    • 従来のPdMに求められてきたのは、人間に対するマネジメント
      • Influence without Authority
      • ビジョンやストーリーテリング
      • 感情や納得感の調整
    • 一方で、AIエージェントは人間ではない
      • 熱量や共感では動かない
      • 人間っぽく振る舞うが、人間ではない
    • PdMは
      • 人には文脈・意図・ビジョンで語り
      • AIには構造・制約・入力条件で語る
    • 人間チームとAIチームの役割分担、責任、期待値の境界を設計する役割になる
  3. 人間・社会との「インターフェイスの境界」設計
    • 従来のプロダクトは
      • 画面
      • メニュー
      • キーボードやマウス
      といったメニュードリブンなMMIを前提としてきた
    • 2026年に向けて
      • 自然言語インターフェイス
      • 人が指示しないプロダクト
      • エージェント同士が自律的に連携する仕組み
      が現実的な選択肢になる
    • その結果、
      • 人が操作する部分/しない部分
      • 人が理解すべき部分/ブラックボックスでよい部分
      • エージェント間のインターフェイス
      を切り分ける必要が出てくる
    • さらに重要なのは
      • 技術的に可能なこと
      • 社会的に受容されること
      は一致しないという前提
    • 信頼、責任、倫理、失敗時の説明可能性を含めて、人間と社会に受け入れられる境界を設計することがPdMの仕事になる

これだけではわからないと思うし、これ以外も私も語った。他登壇者も色々とお話している。なので、興味持って頂けたら、しばらくしてNewbeeで公開される動画を見て頂きたい。