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最良のインターフェイスとはインターフェイスを持たないことだ

IT技術

Visual Basicの父とも言われるAlan Cooperが立ち上げたCooperに所属するGolden Krishnaが数日前に書いたブログ記事が面白いので、ざっと抄訳してみた。

"The best interface is no interface"と題されたこの記事の中で、彼は「最良のインターフェイスとはインターフェイスを持たないことだ」と主張する。

インターフェイス前提の社会

AppleのLisaは、DOSのようなCUI(キャラクターユーザーインターフェイス)から、GUIの世界にデザインを一変させた。そして、Palm Pilotから現在に至る情報機器はマウスさえ必要なく、タッチで操作できる世界を実現させた。この流れが現在のデザインの問題をすべて解決することになった。

では、良い自動車を作るにはどうするだろう? そうだ、インターフェイスをそこに載せよう*1

良い冷蔵庫を作るにはどうしよう? そうだ、インターフェイスをそこに載せよう。

良いホテルロビーを作るにはどうしよう? そうだ、インターフェイスをそこに載せよう。

是非、元記事を見て欲しい。具体的に写真を入れて、その「インターフェイス」を見せている。

彼は言う「テクノロジーにおけるクリエイティブな心理は問題を解くことに集中すべきであり、単にインターフェイスを作ることではない(Creative minds in technology should focus on solving problems. Not just make interfaces)」。さらに、Donald Norman1990年に言った次の言葉を引用する。

The real problem with the interface is that it is an interface. Interfaces get in the way. I don’t want to focus my energies on an interface. I want to focus on the job…I don’t want to think of myself as using a computer, I want to think of myself as doing my job.

インターフェイスにおける本当の問題は、それがインターフェイスであることにある。インターフェイスは邪魔な存在だ。私は自分のエネルギーをインターフェイスに集中させたくない。私は仕事に集中したい。私は自分をコンピューターを使う存在として考えたくない。私は自分を自身の仕事をする存在だと考えたい。

彼は「スクリーンを超える発想をすべきだ」と訴える。「スクリーンを考える限り、本質的に不自然で非人間的なモデルでのデザインしかできないことになる」とも言う。

このように、スクリーンという存在をベースにしたインターフェイスでは、本当に優れた製品をデザインできないと主張する。

シンプルなデザイン3原則

その上で、彼は次の3つの原則を提案している。この3つの原則を実践することで、スマートで、もっと使いやすい、我々の世界をもっとより良くするシステムをデザインできる。

原則1: インターフェイスを排除し、自然な処理を採用する(Eliminate interfaces to embrace natural processes)

彼は自動車のキーアンロックを例に出す。多くの自動車会社がスマートフォンでのキーレスエントリーを実現しているが、そのためには13ものステップを踏む必要がある(1. 自動車に近づいて、2. 財布からスマートフォンを取り出して…)。だが、理想的なのは、自動車に近づいたら、自動的にロックが外れ、そして自動車に入り込むという3つのステップで完了することだとして、メルセデスの次のビデオを紹介している。

ほかにもGoogle WalletのようなスマートフォンNFCを使った決済処理も無駄なインターフェイスが多いと彼は主張しているが、コメント欄にあるように、実際にはGoogle Walletは必要最小限のステップで利用できるようになっているので、ここでは説明を割愛する。

原則2: コンピューターに人を合わせるのではなく、コンピューターを利用する(Leverage computers instead of catering to them)

UIがあると、人はそれに合わせることを強いられてしまう。単純な情報を得るためだけにも、複雑なデータベースを操作しなければいけなかったり、複数のサイトを渡り歩くパスワードは覚えなければいけない(しかもそれぞれの規則が異なり、あるものは大文字や数字を入れることを強いられる)。

UIがないデザインでは、必要なものにだけ集中することができる。コンピューターがあなたに合わせるのである。人が近づけば、自動的に開くドアや電源を入れたら自動的に見たい番組に合わせてくれるテレビ。自動的にアラームをセットしてくれるだけでなく、眠りが浅い時に起こしてくれさえする目覚まし時計。

そのようなシステムが理想だと彼は言う。

原則3: 人に適応するシステムを作る(Create a system that adapts for people)

人は唯一無二で複雑な個体であり、それぞれ独自の興味や希望がある。そのような複数のニーズに合うUIをデザインすることは難しい。にも関わらず、多くの企業はこのように本質的に不自然なインターフェイスを自然な形に見える何かにするために多大な投資を続けているのは何故だろうと彼は問いかける。さらには、時間が経ち、インターフェイスから得られるものが利用者にとって無くなっても、その投資を続けることは何故だろうかと彼は聞く。

彼はここでGmailを例にあげる。Gmailを使い始めた時は、そのスレッド表示(Conversation機能)により多くの得られるものがあった。しかし、時間が経つに連れ、得られるものは少なくなり、インターフェイスは古めかしいものになってしまうと言う。

新しいインターフェイスが開発されることは、時として利用者に苦痛を強いることもある。新しいインターフェイスを習得しなければいけない。いくつかの新しいインターフェイスは良くなっているかもしれないが、その人にとって悪くなっていることもあるだろう。

UIの無いデザインはスクリーンに縛られることなく、本質的な形で迅速に利用者のニーズに沿って成長し続けることが出来ると言う。

元記事では、2つのグラフを用いて、その違いを解説しているので、是非見て欲しい。

彼はこのようなシステムを人に適応するシステム(System adapting to your needs)と呼んでいるが、その例としてあげるのが、Nestだ。Nestはインテリジェントなサーモスタットで、ユーザーの行動を分析し、温度調整を自動で行う。

iPodの設計者が作ったNestサーモスタット, その中身がすごい

このNestの特殊なところは、UIを持たないようにしているところだと彼は言う。

Nest studies you. It tracks when you wake up. What temperatures you prefer over the course of the day. Nest works hard to eliminate the need for its own UI by learning about you.

Nestはあなたから学ぶ。起きる時間に追従する。一日の中でのあなたの好みの温度を覚える。Nestはあなたから学ぶことで、UIの必要性を排除しようと努力している。

最後に、この話は別に新しい話ではなく、今まで何度もデザインコミュニティで語られてきたと言い、いくつかの引用をしている。ここでは紹介しないが、是非元記事を読んで欲しい。

ここで彼が書いていることは、デザインのことだけに限らない。手段と目的を混同してしまうことの危険性については、本ブログでも何度か指摘させてもらっている。大切なのは、問題を解決することであり、出来なかったことを出来るようにすることであり、使われることである。

我々はどうしても近視眼的に考えがちで、つい手段であるはずの機能を実装するということが目的化してしまう。この記事の例で言うと、インターフェイスをデザインすることだ。インターフェイスを越えたところにある本来の目的を理解し、そのために行うべきことを考える。この記事はそんなことを再度思い出させてくれる。

私のこのブログ記事はあくまでも抄訳に過ぎない。元記事には、ここで紹介しなかった話や写真、ビデオなどが含まれているので、是非、そちらにも目を通して欲しい。英語もそんなには難しくない。

ヒューマンマシンインタフェースのデザイン (分散協調メディアシリーズ)

ヒューマンマシンインタフェースのデザイン (分散協調メディアシリーズ)

*1:原文だと、"Slap an interface in it"となっている