競争 - 利用者視点で見ることの重要性
先日、友人とカプセルホテルの話をした。父親からの資産を受け継いだカプセルホテル経営者の話を教えてもらった*1のだが、その時に友人に聞いてみた。
私:「カプセルホテルの競合ってどこだと思います?」
友人:「ビジネスホテル?」
私:「いや、タクシー」*2
利用者の視点に立って考えるというのはこういうことだ。
カプセルホテルの利用シナリオで多いのが、終電を逃してしまったときだ。タクシーで自宅まで帰ることと比べてメリットがあるならばカプセルホテルを選ぶ。タクシーで帰宅すれば、自宅で風呂に入れ、普段のベッドで寝ることができ、着替えもできる。ただし、タクシー料金がかかる。カプセルホテルは料金はタクシーで帰宅するよりも安いが、簡単なシャワーくらいしかなく、睡眠スペースも狭く、着替えはできない。次の日に会社があった場合には多少気まずい思いをするかもしれない。
カプセルホテルはこのようなタクシーとの比較で優位に立たなければいけないのだ。
同じドメイン(領域)でしか競合を考えないと、どうしても視野が狭くなる。実際に利用者が望んでいることの根本まで立ち返って考えることで本当の価値を顧客に与えることができる。カプセルホテルの場合には、終電を逃してしまった状況でリーズナブルな料金でできるだけ良質な睡眠をとり、次の日にできるだけ仕事に差し支えない形で出社することが顧客の希望である。
もう1つ例をあげよう。
航空会社の競合はどこになるだろう。
いろいろな答えがあると思うが、1つ彼らが競合として意識しているのが、通信事業者だ。出張というビジネスでの航空機の利用は、人と会い、そして議論することが目的である。通信技術の発達により実際に現地で会わなくてもそれは実現できるようになっている。電話会議、ビデオ会議、インターネットによるメール、チャット、そのほかの通信手段。これらでは実現できなかったり効率的でなかった場合に出張は考えられる。このケースもカプセルホテルとタクシーの例で見たように、料金とのトレードオフがキーとなる。航空業界各社は業界内の競争だけでなく、このような通信事業者との領域を超えての競争を考えなければいけなくなっている。
前回、スキームを変える という話の中で、ゴールをきちんと見つめ、それを実現するための最適なスキームを考えたほうが良いという話をした。それと同時に、利用者視点に立ち、何が本当に必要とされているのかを考えると良い。それによって、見えてこなかった本当の競争相手が見えてくるだろう。