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ネット時代のメディア戦略(その2) ― メディアを支える3つ“C”

前回(1回目)予告したように、オンラインメディアを支えるコンテンツ(Contents)/コンテナ(Container)/コンベヤ(Conveyer)について、もう少し考えてみる。1回目を読んでいない人はそちらから読んでほしい。→ ネット時代のメディア戦略 ― 垂直統合から水平分散へ

前回にも書いたので繰り返しになるが、一連のこの書き込みは将来別媒体で発表予定であり、そのために自分の考えをまとめるための下書きのようなものなので、多少冗長になったり、矛盾していたり、思い込みであったりするところもあることをご容赦願いたい。

コンテンツ

コンテンツはメディアがユーザーに届ける素材そのものだ。前回も例に出したように、新聞社の場合には記事そのものがコンテンツとなる。また、メディアの多くは広告を収入の基盤とすることが多い。新聞を例にとってみてもわかるが、広告が記事と一緒に紙面を飾ることとなる。これもまたコンテンツの1つとして考えることもできる。

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広告はもちろんメディアの収入源であると同時に、ユーザーから見た場合も情報商品としてのパッケージに含まれる1つの情報部材である。広告の情報としての価値やメディアのエコシステム/ビジネスモデルについては別の回で考えてみるので、今回はこの程度にしておくが、メディアがユーザーに提供するコンテンツには、この広告に代表されるようなコンテナとコンベヤというユーザーまでのパイプライン(経路)を利用した(サブ)コンテンツも含まれることとなる。

新聞の場合のコンテンツの例:

  • 記事(テキスト/写真)
  • 広告

実は、テレビというメディアの場合のコンテンツについてはまだ自分の中でも消化できていない。番組というと粒度が大きすぎる気がするが、ドラマを例にとって、脚本や出演者などまで粒度を小さくすると、新聞の場合にはそれこそペンや原稿用紙、ワープロなどを入れることになってしまい、ユーザーが最終的に目にしないものとなってしまう。テレビ業界に詳しくないので、どのようなものをコンテンツとして定義すれば良いのかちょっとわからない。今のところ、漠然と番組とさせてもらっておく。

コンテナ

コンテナはコンテンツをユーザーに届けるためのパッケージだ。荷物を送る際に段ボールに入れるが、その段ボールのようなものと考えて欲しい。実際には、メディアではコンテナである段ボールそのものがユーザーが目にするものになるので、生素材であるコンテンツをフォーマットするものであるとも考えられる。

今日の新聞の場合は、新聞紙上に印刷されたいわゆる新聞と各社のWebサイトが主なコンテナとなる。

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新聞社はコンテナ、つまり媒体、によりコンテンツである記事を選択する。新聞紙面にしか出さない記事もあれば、Webサイトにしか掲載しない記事もある。

各社とも収入を大きく新聞販売に依存しているため、Webサイトでのコンテンツ露出を高めすぎるとカニバリゼーションが発生してしまう。そのため、意図的に新聞にしか提供しないコンテンツを持つ。また、単にコンテンツの数で差をつけるだけでなく、コンテンツの量にも差をつける。同じ記事であっても紙面に掲載されたものの半分や3分の1程度しかWebサイトには掲載しないことも多い。これらは「続きは紙面で」と書いてくれないことが多いので、Webサイトだけで記事を読んでいると気付かない。

逆にWebサイトにしか提供しないコンテンツもある。速報記事でその後続報が入った場合は、最初の速報記事はWebサイトにしか残らない。また、オンラインの特性を活かしたようなコンテンツは紙面には載らない。たとえば、有名な読売新聞/YOMIURI ONLINEの大手小町*1はWebでしか読めない。

最近では、紙面とWebを連動させるようなものも増えているが、まだ少数だ。

新聞社によっては、雑誌や書籍を持つところもあるが、新聞というメディアでのコンテンツをそのまま活用していることは稀である。そのため、この場合の雑誌や書籍はたまたま同じ社が扱う別メディアとして考えたほうが無難だ。

ちなみに、コンテンツをコンテナに運ぶ際の業界内だけで使われるコンテナも存在する。通信社などが記事を配信する場合には、NewsMLというXMLベースのフォーマットを用いてFTPなどで配信する。更新時や取り消しなどを属性に持つ。自社のWebサイトに提供する場合に、このNewsMLを用いるのが一般的かどうかわからないが、ポータルサイトなどに提供する場合などは、NewsMLを用いることが多い。完全にこれは余談だが。

オンラインコンテンツとコンテナ

オンラインコンテンツの特徴は前回解説したように、マルチソースかつマルチコンテナである。新聞社の場合も、自社のWebサイト以外に主要ポータルに記事を提供する。

別の機会に表にでもまとめてみようと考えているが、各社がどこに配信をしているかは、ポータル側の主要ニュース提供元を見るとわかる。

ポータルのニュース提供元:

このように見ると、多くの新聞社/通信社が多数のポータルに記事を提供していることがわかる。記事はすなわち商品であるので、多くのポータルに提供することで収益はそれだけあがる。また、多くのユーザー(読者)にもその記事は届きやすくなる。

一方、従来の新聞は新聞という紙面に記事が掲載された状態で読者に届けられるため、新聞社はそこまでを含めて記事と考えていた。すなわち、紙面のどこにその記事を配置し、見出しの大きさ、写真の有無や位置、ほかの記事とのバランス*2などを考えて出来上がった紙面が記事の持つメッセージを強める。ジャーナリズムを考えた場合、この編集権というものが重要な位置づけを占めていた。自社のWebサイトでは、Webの表現力の限界はあるものの、各社ともそこは自社の裁量で紙面と同じようにこだわりを持って行っていた。

ポータルに記事を配信する場合、他社=ポータルに編集権を与えることになるため、複数のコンテナ(ニュースソース)の中からどの記事が選択され、どのようにサイトに掲載されるかはポータル側が決定することになる*3。ジャーナリズムを支えるのが従来の1社から現在では複数の社によって行われるようになったとも考えられる。オンラインでニュースを読んでいる人には周知の事実かもしれないが、この点は従来とのメディアの在り方の違いを象徴するものであるため、あえて書いてみた。

この議論は、各社とも横並びで金太郎飴のような記事しか提供していないため、ポータルだろうがどこだろうが適宜編集してユーザーに届けることで構わないという、現在の新聞社の報道姿勢への批判からのメディア不信とも関連する。これについても機会があれば、別の回にもう少し考えてみたい。

これもまた詳しくは別の機会に書いたほうが良いが、ポータルも同じようなニュースソースからのコンテンツを掲載するだけだと、差別化が難しい。実際、日本の大手のポータルサイトでのニュースコンテンツに大きな違いは無い。さらに不思議なことに、すべて同じような3カラムのレイアウトを採用しており、トップページにおいてニュースをタブ型にして中央に配置している*4。結果的にユーザーから見ると、ニュースコンテンツは差別化要因にならない。そのため、ネットワーク外部性といわれる先行者利益であるユーザー数の規模をベースとした魅力を打ち出すか、ニュースの一方通行的な発信ではなく、ユーザーとの双方向のやりとりを重視したソーシャル化を図るかなどしている。

シンディケーション

コンテンツとコンテナのモデルを考える際、モデルの理解を複雑にするもう1つの要因がシンディケーションというビジネス形態だ。

シンディケーションとはコンテキストによっていろいろな意味で使われるが、メディアコンテンツの場合、他社から配信されたコンテンツをサブライセンスし、自社のコンテナを通じてユーザーに届けることを示す。

わかりやすい例を示そう。大手の新聞社の場合、ほぼすべての記事は自社の記者により執筆され、それが新聞またはWebサイトというコンテナを通じて読者に届けられる。だが、自社の記者によりカバーできないエリアについては通信社や業界メディアからのコンテンツ(記事)を自社コンテナに掲載する。たとえば、読売新聞のYOMIURI ONLINEにはCNET Japanからの記事が掲載されている。これなどが、他社からの配信を受ける例である。

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もちろん、通信社/業界メディアも自社のコンテナを持つので、そのコンテンツは 1) 自社コンテナ、2) コンテンツを持つ他社コンテナ(新聞社のWebサイト)、3) ポータルのようなコンテナという複数のコンテナに掲載されることになる。上の図では、1) と 2) しか描かれていないが、多くの場合は 3) もあることに留意されたい。

コンベヤ

オンラインでのコンベヤはインターネットである。大別すると、プッシュ型コンベヤとプル型コンベヤに分けることができる。

プッシュ型コンベヤは、RSSやATOMのようなフィードを発信したり、PCや携帯というデバイスで見出しをティッカー表示する形で行われる。メディアの多くがコンテナであるサイトにトラフィックを集めることで広告収入をあげる必要があるため、コンテンツの内容をすべて含む、いわゆる全文配信は珍しく、フィードの場合でも、多くは見出しとスニペットと呼ばれる抜粋文だけを配信する*5

プル型コンベヤでは、ユーザー自らそのサイトを訪れてもらうための手段を提供する。そのサイトがすでに著名サイトとなっている、たとえば、巨大ポータルであったりする場合には、特に手段を講じることなくとも、ユーザーのブラウザの既定のホームページ(スタートページ)になっているなどしてトラフィックを集めることができる。しかし、そのほかのサイトの場合には、検索エンジン経由もしくはSBM(ソーシャルブックマーク)経由などでサイトにトラフィックが集まる。

次回は

今回は少し冗長な解説になってしまったが、コンテンツ/コンテナ/コンベヤについて詳しい解説を試みた。今後も必要に応じて解説を加えたり、考察をしてみたりしようと思う。

次回は予定通り、ブログなどに代表されるマイクロコンテンツの役割を考えてみる。さらにその先は、次のようなものを予定している。

  • エコシステム/ビジネスモデル
  • 水平分散モデルに移行した後のメディアリテラシの在り方
  • ソーシャル化するメディア/双方向コミュニケーションの課題と期待

軽い気持ちで始めたにしては、ちょっと長丁場になりそうな気もするので、途中番外編で軽いノリのものを入れるかもしれない。

なお、個人的にコメントで、「この展開だと、アドネットワーク万歳になりそう」という意見ももらったが、そんなことはまったく考えていない。むしろ結論を持たないまま今は書いているので、どうなるか自分でもわからない。今のところ、単なる事実の列挙に過ぎないので、どこかでじっくりと考えなければいけないと思う。

Disclaimer

ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

*1:発言小町が最も有名だろう

*2:関連する記事を近くに配置することで、記事に対しての意味づけができる

*3:詳しい契約などはわからない

*4:ご丁寧に左側に垂直型のナビゲーションバーがあるところまで同じだ

*5:フィードに広告を挿入する、いわゆるRSS広告もしくはフィード広告と呼ばれるものもあるが、まだそれほど普及していないため、収入を考えた場合はサイトへトラフィックを集めることが一般的である。また、コンテンツを手軽に持ち運びできる形で配信することは著作権的に懸念するメディアが多い。