プロダクトマネージャーになりたい人のための本

tl;dr

  • 私が監修した本が出る。
  • 私が顧問をしているクライス&カンパニーという人材紹介会社のキャリアコンサルタントが書いた本である。
  • クライス&カンパニーはここ数年、プロダクトマネージャーの転職支援に注力しており、日本で一番プロダクトマネージャーに詳しいコンサルタントだ。
  • 彼らの書いた本(私も一部協力した)なので、プロダクトマネージャーを目指す人にはお勧め。

* はっきり言って宣伝です m(_ _)m

プロダクトマネジメントが浸透した日本の状況

プロダクトマネジメントやプロダクトマネージャーも日本にだいぶ定着してきたと思う。しかし、まだいくつもの課題がある。なんちゃってプロダクトマネジメントを導入して満足しちゃっている企業が多かったり、プロダクトマネジメントの実践を支援するコーチが少ないことなど。中でも最も大きな課題は受給のバランスだろう。

スタートアップから大企業まで、プロダクト担当者不足に悩むところが多く、どの職種も激しい人材争奪戦が続く。企業によっては、ソフトウェアエンジニアの採用のために海外からのインバウンド採用を始めたり、海外にオフィスを開設したりしている。

そのようなプロダクト人材の中でも、特にプロダクトマネージャーの採用難が続く。まだまだ他職種に比べるとマイナーながら、そもそも日本においてプロダクトマネージャーの認知が広がったのが最近であることもあり、経験者そのものが少ない。しかも、他部署は顧客やパートナーとの高いコミュニケーション能力やビジネスドメイン知識が必要とされることから、ソフトウェアエンジニアのようにインバウンド採用に頼れないところも多く、結果、国内人材市場においてのいびつな需給バランスとなる。

この問題の解決のためには、プロダクトマネージャー人材を増やすしかない。プロダクトマネジメントの周辺職種の人や新社会人にプロダクトマネージャーになってもらうのだ。しかし、すべての職種がそうであるように、企業側から強制的にある職種を目指すように指示するのは得策ではない。あくまでも本人に志向してもらうのが良い。

そのためには、プロダクトマネジメントの重要性やプロダクトマネージャーの魅力を発信するのが必要だが、これは最近かなりできているように思う。Twitterを見ると、プロダクトマネージャーの発信が多く見られる*1

あと必要なのは、具体的にプロダクトマネージャーを目指す方法だ。これにもいくつか方法がある。中でも古典的ではあるが、未だに有効な手法は書籍出版だ。

すでにある良書

今までも世界で闘うプロダクトマネジャーになるための本 ~トップIT企業のPMとして就職する方法~という本があった。これは「世界で戦う」とあるように主に米国企業のプロダクトマネージャーになるための情報が詰まっている。原題の"Cracking the PM Interview"からもわかるように、どのようにして採用インタビューを通過するかに焦点を当てたものであるが、単なるインタビュー対策ではなく、プロダクトマネージャーの本質に迫る良書だ。

しかし、これはあくまでも米国の事情だ。しかも、今から9年前(原著は10年前)の書籍である。やや古い印象は否めない。プロダクトマネージャーは時代によって役割も変わるし、企業によって期待される内容も異なる。日本企業が求めるプロダクトマネージャー像もある*2

クライス&カンパニーをそそのかすに勧めてみる

クライス&カンパニーは私が顧問を務める人材紹介だ。顧問をし始めたころは、技術職の幹部社員の転職支援のような領域で手伝っていた。CTOやVPoEなどだ。その後、私が立ち上げメンバーの一人で、最近まで運営にも携わっていたプロダクトマネージャーカンファレンスのスポンサーを頼んだことから、プロダクトマネージャーの転職支援も開始した。人を右から左に動かすことだけの人材紹介会社も多い中、本当にプロダクトマネージャーの重要性を認識し、この職種が日本に必要との思いからプロダクトマネージャーの転職支援事業を広げてきている。

彼らはすでにNoteやポッドキャストでも積極的に情報を発信しているが、ある定例ミーティングの中で、私が何気なく、「本出せば良いですよ」と言ったことから、書籍企画は始まった。

note.com

podcasters.spotify.com

 

プロダクトマネージャーの転職支援のノウハウが溜まっているので、それをきちんと言語化して、外に出すことが皆さんの使命でしょう。とお話するとともに、書籍は名刺代わりになりますよ! これでリード獲得できますよ!という邪な意見も伝えた。ソフトウェアファーストでのアンチパターンで書いたように、私がそれで騙されて*3、書籍執筆まで、とてつもない産みの苦しみを味わったことは伝えずに、書籍にすると良いことだらけだと背中を押した。

冗談っぽく書いてしまったが、本当に日本で一番ノウハウが溜まっているので、これを発信することは多くの人の役に立つはずだ。出版社もプロダクトマネジメントのすべて 事業戦略・IT開発・UXデザイン・マーケティングからチーム・組織運営まで翔泳社で、編集担当者も同じ人になって頂いた。すべては整った。

書籍というプロダクト

執筆がある程度進んだ段階で原稿を見せてもらった。文章としては整っていても、複数名の執筆者がいる書籍にはありがちであるが、全体の整合性が取れていないところがあった。そもそもどんな読者を想定しているかも不明確で、それがぶれている原因でもあった。

そこで、ペルソナは誰で、そのペルソナにはどうなって欲しいかを明確にしようという提案をした。私がプロダクトマネジメント支援で行っているのと同じアドバイスだ。

それ以外にも「書籍をプロダクト」としてプロダクトマネジメントをしようということで、ありとあらゆる提案をした。最終的にはプロダクト責任者であるクライス&カンパニーのメンバーが決めることであるが、つい執筆を終了させたいという「ビルドトラップ」*4の影が見え隠れする発言があると容赦なく指摘した。

最終的には、私でも、出版社でもなく、彼ら(クライス&カンパニーの執筆者たち)がプロダクト責任者として悩みに悩んで決めた形で、自信を持って世に出せるプロダクトとしての書籍になったことと思う。

日本において望まれていた「プロダクトマネージャーを志す人のため」の書籍。6月14日に発売だ。プロダクトマネージャーが気になる人には是非読んで欲しい。

 

 

*1:個人的にはちょっときらびやかに語られすぎている気がしなくもない

*2:都合良いように解釈して、骨抜きのプロダクトマネージャー像を作ることはまったく良いことではないが

*3:誰も私を騙しておらず、私が勝手に邪な欲望に赴くままに執筆を考えただけというのが真実ではある

*4:プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届けるを参照のこと