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犬さえ食わないものは出すな! Eat Your Own Dogfood

IT技術

家電製品などにおまけのようについているネット機能などを試すたびに、絶対にこれは開発している人であっても使っていないだろうと思うことがある。いや、開発者は作っているうちに操作に慣れることもあるので、使えるのかもしれない。だが、開発に直接は携わっていないけれども、同じ開発組織にいるという人間はどうだろうか。同じ会社のほかの社員はどうだろうか。彼らは使えるのだろうか。

開発に没頭していると、自分はその製品や機能をすでに長く使っているので、思い入れも慣れも生じ、客観的な判断ができなくなる。

そのような判断をきちんと行う際にとるべきプロセスがドッグフード(Dogfood)だ。

ドッグフードは開発中の製品を外部に出す前に、社内で行うβテストのことだ。

品質管理部門がいたり、テスト担当者がいるからと言って、その製品が市場で受け入れられるものになっているとは限らない。日本的な品質管理基準から言った場合に、もれてしまうような部分がドッグフードでは見つかる。チェックシートの項目が全部クリアされていたからと言って、その製品が成功するとは限らない。むしろ、チェックシートはクリアできない部分があっても、ドッグフードで圧倒的に支持を受けたもののほうが成功する確立が高いことさえある。

ドッグフードを試すことを英語では、「Eat Your Own Dogfood」という。

英語のWikipediaによると、Alpo Dogfoodという会社がTV CMであるタレントに自社製品であるドッグフードを彼のペットの犬に食べさせたとか、Kal Kan Pet Foodが株主総会で社長の犬に自社製品を食べさせたなどが由来であるとされている。ドッグフードを犬が食べるという当たり前のことが広告や宣伝で使われたというのが本当に由来なのか疑問であるが、その後、マイクロソフト社内で広く使われ始めた。

In 1988, Microsoft manager Paul Maritz sent Brian Valentine, test manager for Microsoft LAN Manager, an email titled "Eating our own Dogfood", challenging him to increase internal usage of the company's product. From there, the usage of the term spread through the company.

Eating your own dog food

1988年にポール・マリッツ(元マイクロソフトVP、現VMWareのCEO)がブライアン・バレンタイン(元マイクロソフトVP、現Amazon VP)に「Eating our own Dogfood」というタイトルのメールを送って、自社製品の社内利用を増やすように指示したのが、マイクロソフト社内でのこの言葉が広く使われるきっかけになったそうだ。ブライアン・バレンタインがLAN Managerのテストマネージャだったときというから、歴史を感じる。

その後、デイブ・カトラーがWindows NTを開発した際には、セルフホスト(Self Host)と言って、NTでNTを開発し、ビルドするというのが開発当初の目標となった。技術系でさえ使われるハイエンドのOSであることを目指していたので、ソフトウェア開発者自身がその上で開発できないようなOSであってはいけないというのは、ごく当たり前の考えだろう。

ドッグフードを行うことで、開発者も自分の開発した機能以外の製品の全体を試すことができる。また、テスト環境という閉じられた特別の環境ではなく、日々の業務や生活という一般的な利用シーンにおいて使うことで、より現実に即した形での確認が行える。これにより、製品内の機能間の連携部分や製品が利用するほかの技術との相互運用などの問題点が浮き彫りにされる。

以前、フィーチャーフォンと呼ばれる携帯電話、いわゆるガラケーを使っていた際に、経験したことを書こう。その携帯電話自身は私は非常に気に入っていたものだったのだが、個別の機能の操作方法が微妙に異なることには最後まで不満だった。画面を1つ戻る場合、操作を決定する場合、そのキー割り当てさえ微妙に異なっていたのだ。なんでそうなるのかは推測にすぎないが、恐らく開発した部署が違うのだろう。機能が用意されているか、正常に動作するかの確認だけでは、このように全体を通しての操作性までのチェックは行えない。これなども、1週間もその携帯を使ってみたらわかったことだろう。

ユーザーエクスペリエンス、使い勝手と簡単に言い換えても良いだろう、これが悪いために競争力を急激に失ってしまっている日本企業も多い。

Eat Your Own Dogfood、これを徹底するだけでも、日本企業復活につながるかもしれない。

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