ネイティブアプリ活況下でのWeb

20150107181258

 

ネイティブアプリかWebかという議論はここ数年ずっとIT業界を賑わしているが、昨秋、米国においてタコベルがサイトでの店舗案内やメニューの掲載を止め、(ネイティブ)モバイルアプリケーションのダウンロードを促すということを行った。

実際にはネイティブかWebかのコンテキストというよりも、ユーザーの導線として、一時的にすべてのソーシャルネットワークをシャットダウンしたという戦略のほうが注目を浴びた。


Taco Bell(タコベル)が公式サイト・ソーシャルメディアアカウントを全てシャットダウン。その理由とは? - ネットマーケティングレポート:ITproマーケティング

 この記事やタコベルのCMOが語っている以下の記事でも書かれているように、ソーシャルからの導線を切ることにより、ユーザーのロイヤリティを高め、モバイルアプリの利用率を一気に増加させることに成功したようだ。


Taco Bell CMO Explains Social Blackout Mobile Promotion | Adweek

一方、ネイティブアプリかWebアプリかという観点からこの試みを考えてみても面白い。

HTML5により、技術的にはネイティブアプリとの差は埋まりつつあるが、残された技術的な課題や直接技術には関係ないことまで含むさまざまな理由により、実際にはモバイルにおいてはネイティブアプリのほうが優勢である。そのようなトレンドを見て、またさらに多くのネイティブアプリが開発される。

しかし、すべてのケースにおいてネイティブアプリが好まれるとは限らない。たとえば、タコベルような飲食店だったとしても、1年に1度しか使わないようなお店だとしたら、その1度のためにアプリのインストールを強いられることを好まない人は多い。

タコベルの顧客がどのような顧客かわからないが、単にカジュアルなメキシカンレストランを探しているような人や料理にこだわらずファーストフード店を探している人にとっては、アプリをインストールしてまで、タコベルの情報を得ようとは思わないのではないか。もしくは、もしタコベルではうまくいったとしても、それはタコベルのブランドイメージが強力であったからかもしれない。行くかどうかも決めていない良く知らない店のアプリなど誰が入れたがるだろう。

普通のユーザーがインストールするアプリの数は限りがある。端末の容量による制限もあるが、1ユーザーとして負担なく利用できる数にもおそらく上限があるのであろう。

実際、ここ数年でインストールされているアプリの数は減少傾向にある。

以下は、Googleが世界のスマートフォンの利用状況を調査した結果を公表しているOur Mobile Planetで生成したグラフである。見てわかるように、スマートフォンにインストールされているアプリ数は2011年には45だったが、2012年には40、2013年には36に減少している。何故減少しているのかは不明だ。また、これが一時的なものなのかもわからないが、いずれにしろ青天井にユーザーがアプリをインストールすることはありえない。

f:id:takoratta:20150107185021p:plain

Our Mobile Planetより)

上のグラフでは、最近30日間で積極的に使用したアプリの数も含めている。これは3年でほとんど変化は無いが、70%以上のアプリはインストールされていても直近の1ヶ月の間でほとんど使われていないことを示している。

この状況を踏まえて考えると、多くのゲームのように、いわゆるアプリとしての形態が必然なもの以外は、ユーザーとのエンゲージメントを高めるためのアプリを模索しつつ、検索やソーシャルネットワークからの導線に対してのWebをしっかりと整備し続けることが必要となるであろう。これはWebの特性である、すべての情報がユニークでリンク可能なID、すなわちURLを持つということにより実現される。アプリとの違いとしては、実はこれが最も重要な要素なのかもしれない。