競合製品分析の際に心掛けること
競合製品分析を行うべきかどうかは慎重に判断する必要がある。分析するとどうしてもある特定の機能の有無ばかりに目が行ってしまいがちになる。持っていない機能の実装を行った結果、その製品の(劣化)コピーにしかならないことも多い。
知的所有権の問題に神経質な企業などでは競合製品の分析を禁じていたり、分析を行える社員を限定していたりすることもある。
この間も知り合いと話していたのだが、競合製品を分析するならば、機能や実装に目をとらわれるのではなく、それが何を実現しようとしているかを探るべきだ。良く言われるように、手段と目的を分けて考え、手段にこだわるのではなく、目的を理解しなければいけない。それが利用者のどのような問題を解こうとしているのか、利用者に何を提供しようとしているのか、これが目的だ。その製品が持っている機能はたまたまその企業が手段として選んだに過ぎない。目的が理解出来たならば、それが自分たちにとっても優先度の高いものなのかを考える。同じ分類の製品であっても、どのような製品にしたいか、ターゲットは誰かによって、何を優先するかは異なる。自分たちにとっても優先度が高いとなったら、次にどのように実現するか、すなわち手段を考えることになる。
このようなプロセスを経ずして、手段である機能/実装にばかりとらわれると、単なるモノマネ製品となってしまう。
実例をあげよう。
最近の薄型テレビにはセンサーがついており、人が前にいないと電源が切れるようになっている。また、同じ技術で画質や音質を人がいる方向に最適化することもある。これが解こうとしているのは、自動的にエコと最適な画質/音質を実現することである。自社の製品として考えるべきなのは、これが自社製品にとっても優先すべきものなのか、優先すべきものであった場合、どのようにして実現すべきなのかである。この例の場合は、センサー以外の実現方法はなかなか考えつかないかもしれないが、それでも単に手段である機能を装備することに走るべきではない。
もう1つ例を考えてみよう。
ブラウザにマウスジェスチャー機能があったとする。これを要求するユーザーが多かったとしても、その実装をすぐに考える前にやることがある。マウスジェスチャーにより何を解こうとしているか、何を実現しようとしているかを考えることだ。マウスジェスチャーを使って行えることはマウスによるページ操作やタブ操作などだが、多くの場合、実は標準状態でもマウスだけで実現は出来る。マウスジェスチャーはマウスポインターの移動距離が短くて済むことやカスタマイズが可能なことなどが特徴としてあるのだろう。ここから考えるべきなのは、マウスポインターの移動距離が少なくてカスタマイズ可能にすることではなくて、もっとステップバックして考えることだ。出来るだけ行っている操作を妨げることなく、ページ操作やタブ操作などを行えること、そしてそれが自分好みになること*1。いろいろな考えがあるだろうが、このように目的を分析することも出来る。もしこれが目的として認識出来たならば、これが重要かを考え、手段としては何があるかを考える。もしかしたら、音声でナビゲーションを行うということが良いと考えるかもしれないし、脳波を読み取るという考えに行き着くのかもしれない。
以上が私が競合製品分析をする場合に心掛けていることだ。もっとも個人的にはあまり競合製品分析はしない。それよりもユーザーが何を求めているかを把握することに気をつける。
1つだけ付け加えることがある。もし競合製品の特定の機能がすでに広く認識され、さらに他社にも採用されている場合だ。この場合、別の手段でユーザーの問題を解こうとした場合、ユーザーに新たに学習するというコストを払ってもらう必要がある。個人的にはそれでも常に新たな手段を考えるべきと思うが、この学習コストについては気をつける必要がある。
*1:あくまでも例