カニンガムの法則の続き
昨日の投稿の続きというか補足。
-
Cunningham's Lawによると、Steven McGeadyがこの法則の作者だと書いてある*1。間違った答えを投稿して修正してもらうというのを実践したつもりだったわけではない。
- Wikipediaのようなサイトではなく、質問投稿サイトでも同じかという質問があったが、ただ質問するよりも自分が正しいと思い試してみたことを書いたほうが良いアドバイスは貰える。これも一種のカニンガムの法則の実践だろう。
- この法則は2chで長いこと立証されているものだというコメントもあった。また、昨日の投稿へのコメントでも「タイトルが釣り記事のテンプレに沿っていればさらに効率は上がりそうですね。と、はてブ村人な自分の私見。」と書かれていた。TwitterでもQDB: Quote #152037を紹介されたが、釣り=挑発することで注目を集めるという手法と組み合わせることを想起させる法則ではあるようだ。もちろん、そうした場合はネガティブに捉えられることも多い。昨日の投稿へのもう1つのコメント「太古の昔から、『インターネットが憎悪ベースのコミュニケーションになる原因』と指摘されているやつですね。詳しい回答者に苦痛を与えることで反応を強制し、うんざりさせて消尽するメソッドでもある。」というのはこのような挑発手法の負の面を言い得ている。
- マクドナルド理論を思い出すという意見もFacebookで貰った。
私としては、期せずして、自分の知らなかった情報や違った捉え方を知ることが出来て、これぞカニンガムの法則というのを実感したが、知人から本質に迫る質問を受けた。
(このカニンガムの法則の意図するところは)「誤った内容」を「誤っていると知りつつ」インターネット上に投稿するというものなのか、それとも「自分としてはベストの答え」が修正されることを期待するものなのか。
私なりにカニンガムの法則を解釈すると、
自分としては正しいと思っている情報を、本当に正しいか確認をとるために質問するよりも、それを正しい情報として投稿することのほうが本当に正しい回答を得られる。
だと思う。
Web企業は実験を良く行う。A/Bテストなどが代表的であるが、多くの実験を施し、その結果に応じて調整をし、ユーザーの望む形に製品を改良する。これは仮説に基づき実験を行い、それを繰り返していくことで真理に近づくという科学の本質とも重なる部分が多い。正しいことなど誰もわからないことも多い昨今、カニンガムの法則のアプローチはこのネット社会における新たな仮説/実証であるのかもしれない。ちょっとこれは拡大解釈かつ脱線しすぎであるが。
*1:"According to Steven McGeady,the law's author"Cunningham's Lawより
インターネットで正しい回答を得るための最善の方法は質問することではない。間違った回答を投稿することだ
しばらく前になるが、ある「むっちり女子のイラスト」がTwitter上で話題になった。154cmで44kgという設定で描かれた女の子のイラストが、その設定にしては太り過ぎているということで、特に女性から異論が噴出した。
炎上かと思いきや、実際にその体型の女性が自撮り写真をメンションするなどして、逆に現実的なデータが取得できるという結果になった。
元の投稿者のイラストが魅力的だったことや異論を聴く姿勢が好感を呼んだのだとも思うが、一連のやりとりを見て、次の言葉を思い出した。
The best way to get the right answer on the Internet is not to ask a question, it's to post the wrong answer.
インターネットで正しい回答を得るための最善の方法は質問することではない。間違った回答を投稿することだ。
これはWikiの父であるウォード・カニンガムの言葉でカニンガムの法則(Cunningham's Law)とも呼ばれる。WikiをベースにしたWikipediaがこの精神を採用していることに疑問は無いだろう。
考えすぎて回答を得られるまでにやたら時間がかかるくらいなら、もちろんその内容やレベルにもよるが、間違った回答をぶつけてみるほうが確かに良い。どのような意見も受け入れられる柔軟であることが前提にはなるが。
Webアプリでキーボードショートカットを見たくなったら、とりあえず ? か Ctrl+/ (Win) または Cmd+/ (MacOS) を押してみよう
効率性を追求する真のギークはマウスなど使わない。キーボードのホームポジションから出来るだけ手を移動させないのを良しとする。
そんなギークが愛して止まないのがキーボードショートカットだが、各Webアプリごとのキーボードショートカットをすべて覚えておくのは難しい。そんなときは、「?」キーか「Ctrl+/」(Windowsの場合)または「Cmd+/」(MacOSの場合)を押してみると良い*1。
独断と偏見で選択した主要Webアプリとキーボードショートカット表示*2のためのキーは以下のとおり。
アプリ名 | キー |
Google+ | ? |
Gmail | ? |
Googleニュース | ? |
Googleカレンダー | ? または Ctrl+/ か CMD+/ |
Googleグループ | ? |
Googleドライブ | ? または Ctrl+/ か CMD+/ |
Googleドキュメント | Ctrl+/ か CMD+/ |
Googleスプレッドシート | Ctrl+/ か CMD+/ |
Googleプレゼンテーション | Ctrl+/ か CMD+/ |
? | |
? | |
Tumblr | ? |
Outlook.com | ? |
Google+(? キー)
Gmail(? キー)
Googleニュース(? キー)
Googleカレンダー(? キーまたは Ctrl+/ か CMD+/ キー)
Googleグループ(?キー)
Googleドライブ(? キーまたは Ctrl+/ か CMD+/ キー)
Googleドキュメント(Ctrl+/ か CMD+/ キー)
Googleスプレッドシート(Ctrl+/ か CMD+/ キー)
Googleプレゼンテーション(Ctrl+/ か CMD+/ キー)
Twitter(?キー)
Facebook(?キー)
Tumblr(?キー)*3
Outlook.com(?キー)
冒頭でギークが云々と書いたが、キーボードショートカットはアクセシビリティとしても有効なものだ。Webアプリでキーボードショートカットを用意した場合は、?キーか Ctrl+/ やCmd+/ キーでキーボードショートカット一覧を表示するようにしてくれると良いと思う。
地方自治体公式サイトのスマートフォン対応
日曜日のHTML5 Conference 2015でも披露したデータだが、日本の地方自治体公式サイトのスマートフォン対応状況を公開する。本当は人口や世代別人口だとかスマートフォン普及率だとかとの相関も見てみたかったのだが、それは折を見てまた。
スマートフォンの対応の有無はviewportの使用の有無で判断した。リダイレクトしてスマートフォン対応のページに飛ぶ場合はカウントされるが、別ページで「スマートフォン用のページはこちら」などのようなリンクから別アクションで飛ばなければいけない場合はカウントされない。
全国に市区町村は1,741あるが、それらを都道府県別に集約し、地図に埋め込んだ図がこれだ。都道府県自体の公式サイトは含めていない。
生データは以下のようになる。
都道府県 | スマートフォン対応比率 | |
1 | 北海道 | 25.00% |
2 | 青森県 | 7.50% |
3 | 岩手県 | 12.12% |
4 | 宮城県 | 11.43% |
5 | 秋田県 | 16.00% |
6 | 山形県 | 14.29% |
7 | 福島県 | 27.12% |
8 | 茨城県 | 50.00% |
9 | 栃木県 | 20.00% |
10 | 群馬県 | 17.14% |
11 | 埼玉県 | 19.05% |
12 | 千葉県 | 12.96% |
13 | 東京都 | 35.48% |
14 | 神奈川県 | 18.18% |
15 | 新潟県 | 16.67% |
16 | 富山県 | 13.33% |
17 | 石川県 | 5.26% |
18 | 福井県 | 11.76% |
19 | 山梨県 | 11.11% |
20 | 長野県 | 15.58% |
21 | 岐阜県 | 14.29% |
22 | 静岡県 | 31.43% |
23 | 愛知県 | 27.78% |
24 | 三重県 | 10.34% |
25 | 滋賀県 | 31.58% |
26 | 京都府 | 11.54% |
27 | 大阪府 | 16.28% |
28 | 兵庫県 | 21.95% |
29 | 奈良県 | 5.13% |
30 | 和歌山県 | 30.00% |
31 | 鳥取県 | 26.32% |
32 | 島根県 | 21.05% |
33 | 岡山県 | 18.52% |
34 | 広島県 | 26.09% |
35 | 山口県 | 10.53% |
36 | 徳島県 | 62.50% |
37 | 香川県 | 11.76% |
38 | 愛媛県 | 20.00% |
39 | 高知県 | 8.82% |
40 | 福岡県 | 16.67% |
41 | 佐賀県 | 15.00% |
42 | 長崎県 | 28.57% |
43 | 熊本県 | 17.78% |
44 | 大分県 | 33.33% |
45 | 宮崎県 | 23.08% |
46 | 鹿児島県 | 4.65% |
47 | 沖縄県 | 19.51% |
対応比率でソートしたい場合は、こちらでどうぞ。
カンファレンスでは茨城県が何故か対応が進んでいると言ってしまったが、嘘だった、徳島県だった。ここに謹んでお詫びする。
[更新 2015年1月28日午前9時13分]自治体数を1742から1741に修正。
ネイティブアプリ活況下でのWeb
ネイティブアプリかWebかという議論はここ数年ずっとIT業界を賑わしているが、昨秋、米国においてタコベルがサイトでの店舗案内やメニューの掲載を止め、(ネイティブ)モバイルアプリケーションのダウンロードを促すということを行った。
実際にはネイティブかWebかのコンテキストというよりも、ユーザーの導線として、一時的にすべてのソーシャルネットワークをシャットダウンしたという戦略のほうが注目を浴びた。
Taco Bell(タコベル)が公式サイト・ソーシャルメディアアカウントを全てシャットダウン。その理由とは? - ネットマーケティングレポート:ITproマーケティング
この記事やタコベルのCMOが語っている以下の記事でも書かれているように、ソーシャルからの導線を切ることにより、ユーザーのロイヤリティを高め、モバイルアプリの利用率を一気に増加させることに成功したようだ。
Taco Bell CMO Explains Social Blackout Mobile Promotion | Adweek
一方、ネイティブアプリかWebアプリかという観点からこの試みを考えてみても面白い。
HTML5により、技術的にはネイティブアプリとの差は埋まりつつあるが、残された技術的な課題や直接技術には関係ないことまで含むさまざまな理由により、実際にはモバイルにおいてはネイティブアプリのほうが優勢である。そのようなトレンドを見て、またさらに多くのネイティブアプリが開発される。
しかし、すべてのケースにおいてネイティブアプリが好まれるとは限らない。たとえば、タコベルような飲食店だったとしても、1年に1度しか使わないようなお店だとしたら、その1度のためにアプリのインストールを強いられることを好まない人は多い。
タコベルの顧客がどのような顧客かわからないが、単にカジュアルなメキシカンレストランを探しているような人や料理にこだわらずファーストフード店を探している人にとっては、アプリをインストールしてまで、タコベルの情報を得ようとは思わないのではないか。もしくは、もしタコベルではうまくいったとしても、それはタコベルのブランドイメージが強力であったからかもしれない。行くかどうかも決めていない良く知らない店のアプリなど誰が入れたがるだろう。
普通のユーザーがインストールするアプリの数は限りがある。端末の容量による制限もあるが、1ユーザーとして負担なく利用できる数にもおそらく上限があるのであろう。
実際、ここ数年でインストールされているアプリの数は減少傾向にある。
以下は、Googleが世界のスマートフォンの利用状況を調査した結果を公表しているOur Mobile Planetで生成したグラフである。見てわかるように、スマートフォンにインストールされているアプリ数は2011年には45だったが、2012年には40、2013年には36に減少している。何故減少しているのかは不明だ。また、これが一時的なものなのかもわからないが、いずれにしろ青天井にユーザーがアプリをインストールすることはありえない。
上のグラフでは、最近30日間で積極的に使用したアプリの数も含めている。これは3年でほとんど変化は無いが、70%以上のアプリはインストールされていても直近の1ヶ月の間でほとんど使われていないことを示している。
この状況を踏まえて考えると、多くのゲームのように、いわゆるアプリとしての形態が必然なもの以外は、ユーザーとのエンゲージメントを高めるためのアプリを模索しつつ、検索やソーシャルネットワークからの導線に対してのWebをしっかりと整備し続けることが必要となるであろう。これはWebの特性である、すべての情報がユニークでリンク可能なID、すなわちURLを持つということにより実現される。アプリとの違いとしては、実はこれが最も重要な要素なのかもしれない。