すべてのWebはアプリケーション化する… ということはない

静的な情報の送受信から始まったWebはAJAXという技術革新を経て、今アプリケーションとしてのプラットフォームとなり、その中で動的な対話性が重視されるようになっている。

これが、私なども良く言う、現在のWebの状況だ。HTML5が出てきた背景もこれにある。

だが、すべてのWebはアプリケーション化する とまで言うのは行き過ぎだ。私も口がすべってこう言ってしまったこともあるかもしれない。ウソではないが、誤解を招く可能性がある。

情報の受発信というのは今でも重要なWebの役割の1つだが、その役割だけとってみても、目に見えるものがすべてのものであるという体験は必要だ。たとえば、新聞を考えてみよう。新聞は古い技術の象徴のように思われているが、俯瞰して見た時に全体の記事をスキャニングできるなど、実は非常に汎用性の高いフォーマットである。

マウスをホバーしたり、クリックして、現れるコンテンツ。そのような作業は単純にコンテンツを見たいという利用者にとって苦痛以外の何ものでも無いこともある。実は、今見えているものがすべてのものであるというインターフェイス、その単純さというのはまだまだ必要とされる、いや、ずっと必要とされるであろう。

もちろんコアコンテンツ以外の部分や付帯機能として動的な要素や対話性は追加されることもあるので、その意味ではアプリケーション化されるというのはウソではない。また、静的に見えるコンテンツであっても、裏でセマンティック性を高めプログラマブルにしていたり、他サービスからの連携がされ易いようになっていたりするので、それらも含めてアプリケーション化されているというのが正しい説明だ。

こんなことを考えたのも、対話性にこだわり過ぎた議論をしていた私を、そんなものは利用者は求めていないし、かえって読みにくいと諌めてくれたある機会があったからだ。

Webのアプリケーションの側面だけ取り上げすぎて、行き過ぎた考えにならないように自重したい。