P2Pでソフトウェア配信

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Windows Vista Beta2がパブリックにリリースされてからしばらくたつ。現在のところ、Windows Vista Beta2はマイクロソフトのサイトからダウンロードするか、DVDを入手するしかない。誰もが考えつくのが、これをP2Pで配信できないかということ。

米国では実際に行われていた。以下、TechWebから。

Vista Beta Now On Tap Via BitTorrentより引用:

"This is not a crack, this is not a hack, this is not software piracy -- it's unofficial mirroring with official validation," the pair wrote on their VistaTorrent.com site. "You can get a Windows Vista Beta 2 product key for free through Microsoft, as the OS won't install without one."

VistaTrrent.comサイトを立ち上げたオーナーは言う。「これはクラックでもなければ、ハックでもない。ソフトウェアのパイラシーでもない。-- 公式な妥当性チェック(バリデーション)が必要な非公式なミラーリングだ」。「マイクロソフトからWindows Vista Beta2のプロダクトキーは無料で入手できる。これが無ければ、OSはインストールできない」。

インターネットへのインパクトも心配されるほどのトラフィックだっただけに、P2Pによる配信というのは効率的だ。実際、P2P技術の活用シナリオの1つとして、ソフトウェア配信というのは以前から期待されていた。

だが、結局、VistaTorrent.comでのサービスは停止を余儀なくされる。

Microsoft Shuts Off Vista Torrentより引用:

"We hereby give notice of these activities to you and request that you take expeditious action to remove or disable access to the material described above, and thereby prevent the illegal reproduction and distribution of this software via your company's network," read the text of the Microsoft e-mail Ludington and Pirillo posted on the site.

やはり、"prevent the illegal reproduction"ということが大きな懸念だったのだろう。

P2Pファイル交換技術によるソフトウェアの配信というのは今までも試されたことがあったが、ソフトウェアの真正の証明というのが常に課題となる。以前、「Winnyは使わないほうが良い。だけど、どうしても使いたいのなら…」をポストする際に、いくつものWinnyを亜種を探したが、Winny上で見つかるWinnyのバージョンほげほげと名乗るソフトウェアが本当にWinnyなのかを知るすべはなかった。

Winnyの場合はソースが明らかでないことが魅力の1つだったので、難しかったと思うが、ほかの一般のソフトウェアの場合には、ハッシュ値をどこか信頼できるサイトに掲載しておいたり*1、Authenticodeを使うことなどで、技術的には解決することができる。それでもP2Pファイル交換ソフトウェアを使うすべてのユーザーが、P2Pファイル交換ネットワークで流通されるソフトウェアが本当に信頼できるものかどうかを把握できることを期待してはいけないだろう*2。むしろ、VistaTorrent.comというような第三者の手によるのではなく、ソフトウェア事業者自身が構築したP2Pネットワークでソフトウェア配信を行うことができるようになるのが理想だ。

今回は、残念ながら、技術もまた利用者側のリテラシーもまだ未成熟だったということになるのだろうか。

*1:VistaTorrent.comには実際、Windows Vista Beta2のISOイメージのMD5値が掲載されていた。

*2:つまり、MD5ってな〜に? デジタル署名が無いっていう警告が出るけど、いつも無視しているから、今回もいいんだろう〜、とかいうユーザーが多いのではないかということ。