上海訪問レポート 2018年冬

金曜日(12/21)から2泊3日の旅程で上海に行っていた。先月に深センへ行ったときの模様もレポートにしたが、今回もその深センとの違いなども含めてレポートする。

 

takoratta.hatenablog.com


交通

まず、2泊3日の滞在期間中、自分が利用もしくは観察できた交通機関について記す。

タクシー

タクシーは以前からの中国のタクシーのイメージに近いタクシーだった。と言ってもわからないかもしれないが、以前に私が中国に来たときは、運転席が後部座席から鉄格子で分離されているものが多かった。今回の上海は鉄格子は見当たらなかったものの、透明樹脂のシールドで囲われていた。深センではこのようなものは見なかった。

また、深センでは、運転席のコックピットに運転手のQRコードが表示され、レーティングできるようになっていた(タクシー運転手のレーティングを参照)が、上海ではそのようなことも無かった。ただし、WeChat PayやAlipayというQRコード決済が利用できるところは同じだった。

地下鉄

地下鉄は、深センではQRコード決済で乗車券を買えるようになっていたり、WeChatミニプログラムでそのまま改札を通過できたりした。上海でも同じかと思ったのだが、試すことが出来なかった。

駅では、上海では出来ないのだと諦めてしまっていたのだが、どうやらそうでは無かったようだ。それは後から知った。

まず、券売機はこんな感じだった。

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券売機の列

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券売機。良く見ると、右上にAlipayの表示がある。

深センの券売機はわかりやすくQRコード決済での支払い方法を示していたのだが、上海のこの券売機は金銭での支払いを基本としているようだ。右上のAlipayの表示は後から写真を見直して気づいた。しかし、未だにいつの段階でQRコードを読み込ませることが出来たのか良くわからない。

改札は次の写真のようにQRコードで通過することが可能だが、肝心のアプリをどこから入手するのかの説明は、少なくとも我々が見た範囲では駅構内で見つけることは出来なかった。

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上海の地下鉄駅の改札

後から、地下鉄のアプリは深センの地下鉄と同じWeChatミニプログラムで、地域を上海に選択することで使えそうなことがわかった。

全体的に、上海でも深センと同じことは実現されているようなのだが、あまりITでのサービスを前面に出していないように感じた。QRコード決済で乗車券が買えることを前面に出していない券売機だったり、その券売機でも実際には買えるのだが、説明が目立つところに書かれていない。QRコードで通過できる改札であっても、そのアプリの入手先を示していない。深センでは、交通機関のものに限らず、あちらこちらにもっと目立つ形でWeChatミニプログラムやスマートフォンアプリへの導線となるQRコードが用意されていた。

シェア自転車

自転車のシェアリングは上海でもMobikeが一番目立っていた。ofoは私が深センに行った後にも、さらに状況が良くないと伝えられているが、台数はMobikeに比べると少ないものの、それでもまだ普通に利用されていた。深センでは、ofoの墓場かと思われるように、雑にofoが放置されている場所を多く見かけたが、上海ではそんなことは無かった。このシェア自転車の整理はofoに限らず、他の事業者の自転車についても言え、上海ではどこでも綺麗に整理されていた。これは、上海市民のマナーが良いのか、事業者の努力が追いついているのか、どちらかだろう。想像だが、深センほど利用されていないため、事業者の努力が追いついているのではないかと思う。

 

写真から、オレンジのMobikeと黄色のofo以外の自転車も見つけられると思うが、この2社以外の事業者の自転車も見かけた。水色はHellobikeで、赤と白のは99単車。

 

thebridge.jp

www.shanghainavi.com

飲食店

今回は、ラッキンコーヒーとフーマーフレッシュ(盒馬鮮生)のロボットレストランに行ってみた。

ラッキンコーヒー

ラッキンコーヒーは今年1月に創業したばかりだが、すでに「北京、上海、広州、西安、青島を含む21都市で1,400以上の店舗を展開し、中国で2番目に大きいチェーンコーヒーブランドへと発展」している(10月24日現在/luckin coffee より)。

www.newsweekjapan.jp

成長の秘密はスマートフォンアプリからのオーダーからコーヒーを受け取るまでの体験の良さとデリバリーの手軽さだろう。

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ラッキンコーヒーの店舗

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ラッキンコーヒーの店内

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Luckin Coffeeアプリ

スマートフォンアプリでのオーダーは通常のECサイトなどでの注文と変わらない。商品を選びカートに入れたら、決済へと進む。WeChat PayやAlipayなどが使える。オーダーを完了すると、画面に完成時間が示される。制作中になると、画面も変化し、作られている様子を伺い知ることができる。完成したら、画面に表示されたQRコードをスキャンさせることで商品を受け取れる。

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Luckin Coffeeのカップ

ドリンクカップは特に変わりはない。

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ただ、蓋には工夫がある。まず質感が良い。そして、この微妙な傾斜が飲みやすさを演出する。また、少し尖った飲み口が、「乳首を吸う感じに近く、それが安心感を生み出している」(同行者談)らしい*1。さらに、飲み口の栓は飲んでいる最中は対角方向に用意された栓置き場に固定しておくことが出来る。これらの細かい気配りが妙に嬉しく、全体としての体験を向上させる。

店舗としては、普通のおしゃれなカフェとしか感じないし、土曜日の午前中だったからか、あまり客もおらず閑散としている。ただ、デリバリーはひっきりなしに注文が入っているのか、バイク運転手が列をなしていることも多かった。

ロボットレストラン

 深センレポートでも紹介した盒馬鮮生(フーマー・フレッシュ)は上海にロボットレストランを出している。今回はそちらに行ってみた。

正式名称はROBOT.HE 機器人餐庁と言う。

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フーマーフレッシュのロボットレストラン

まず、入店するには、フーマーフレッシュのアプリが必要だ。アプリを店員に見せ、テーブルを指定してもらうか、店舗横にある端末にアプリで表示されるQRコードをスキャンさせることでテーブルを指定してもらう。いずれかの方法でアプリとテーブルが紐づけされる。

なお、フーマーフレッシュはアリババの傘下なので、Alipayアカウントが持っていると、自動的にフーマーフレッシュのアカウントはそれと連携することになる。

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フーマーフレッシュアプリでの操作

アプリからオーダーすると、調理された食事がロボットに乗ってやってくる。ロボットと言っても、ルンバのような形状のロボットが食事を載せ、店舗内の決まった通路の上を走ってくるだけである。R2D2のようなものが人間と同じ通路を縦横無尽に動き回るわけではない。

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ロボットレストランのロボット用通路

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ロボットレストランのロボット用通路

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ロボットレストランのロボット待機場

テーブルには、日本の居酒屋にあるようなオーダー端末がある。オーダーは自分のスマートフォンアプリから行うので、これでは注文状況などが表示される。

 

ロボットショーというメニューがあったので、それを選択すると、パックマンのような画面が表示される。これは、現在のロボットの位置をフロアレイアウト上に表示するものだ。

次の動画では、ロボット一台が動作しだしたことが画面からわかり、それが実際に通路を移動している様子も見て取れる。

 


ROBOT.HE 機器人餐庁


ここまで書いたところで白状すると、実は我々は注文することが出来なかった。中国国内の銀行口座を持っていないと完全な本人確認は終わっていないというステータスになっているようで、このフーマーフレッシュアプリ以外でも、最後まで行くと、銀行口座(バンクカード)番号を入力せよと言われることがあったのだが、今回もそこでひっかかった。なので、残念ながら、最後までは体験できていない。

なお、以下の記事にも詳しく紹介されているので、こちらも参照して欲しい。

flymedia.co.jp

日本のくら寿司みたいだとも思うが、くら寿司よりも汎用性はあり、エンターテイメント性も高い。ロボットの部分だけ見てもそうだが、アプリからオーダーし、決済まで済ませてしまえる利点は大きい。これにより、フロアには入店時のサポートをする店員と食後の後片付けをする店員しかいない。効率性は極めて高い。

オレンジ生搾りジュース販売機(番外編)

深センでも見かけたのだが、自動販売機型のオレンジ生搾りジュース販売機がある。

一杯15元(約240円)で販売されている。

QRコード決済か現金で料金を支払うと、オレンジが4個ほど自動投入されて作られる。絞られている様子は外からは残念ながら見えない。

 


オレンジ生搾りジュース販売機(中国)

 

ストローは1つずつ、下の写真の取り出し口から取ることが出来る。買わないとストローが排出されないようになっている。

なかなか美味しかった。15元というのは安くはないが、搾りたてが飲めるのは嬉しいのかもしれない。中国各地にあるらしいので、人気なのだろうか。

まとめ

深センで私が体験したことは、実は他の中国の都市でも一般的だと言われた。特に、QRコード決済などはかなり辺境の土地でも実現できていることだと教えられた。確かに、今回上海に来てみて、それは実際に感じた。ただ、深センは、ITの活用をより前面にアピールしていると感じた。上にも書いたように、交通機関でのQRコード決済やアプリ利用も実はできたようだが、その場ではわからなかった。深センでは、いたるところに案内があり、嫌でも目についた。深センでは不動産屋に社員の顔写真とともにQRコードが付けられていたが、あれは恐らくその社員の実績とレーティングに誘導されるのではなかったかと思う。深センではそこまで貪欲にQRコードを活用していた。隙あらば、何かITを活用できないか、QRコードと連動させたらどうなるかを考えているように感じる。

私が上海を前回訪れたのは、上海国際万博が行われていた2010年なので、もう8年前にもなる。その時でさえ、上海の国際都市ぶりに驚き、黄浦江の夜景の素晴らしさに息を呑んだ。今回、その同じ黄浦江をまた訪れたが、そこで見つけたのは、深センの市民広場のLEDを使ったプロジェクションマッピングのようにビルを電飾で彩る街だった。

川の向こう側にこのような電飾がある一方、古くからの歴史建築群は8年前と変わらない。

朝にホテルの周りを少し走ったが、そこにも以前からの中国の街があった。太極拳らしき体操を仲間と行っている老人たちもいた。

圧倒的な国土の広さ、人の多さ、活気、歴史と技術。これらがカオティックに混在するのが今の中国だ思う。